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刀の樋先にも見所が。

以前刀屋さんから棒樋の特徴として、鎌倉時代は樋先が上がり、南北朝時代は樋先が下がる傾向があると教えて頂きました。
そんな所にも見どころが!と驚いたので今回はその話について紹介します。

因みに「樋(ひ)」とは刀身に施した溝の事で、刀の重量軽減の為と考えられています。(時々強度を増す為と言う人がいますが、樋を入れない方が強度がある事は言うまでもありません。)

①鎌倉時代の棒樋

樋先が上がる(切っ先に近い位置から樋が彫られています)

・福岡一文字 鎺下ニ菊花紋ノ切付アリ

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/9394/)


・吉房

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/10970/


・無銘 吉岡一文字(鎌倉時代)

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/661/


②南北朝時代の棒樋

対して南北朝時代は樋先が下がった位置から彫られている傾向があります。
確かに鎌倉時代と比べても横手もしくはその下で樋先があるものが多いように感じます。
鎌倉と南北朝で樋先の開始位置に差が出ているのは何か理由がありそうですが、この理由について私は分かりません。
ご存じの方いらっしゃいましたら教えて頂けると嬉しいです。

・備州長船住成家

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/647/)

・無銘(伝志津)

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/511/)

・無銘(伝兼光)

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/23764/)


・ (金粉銘) 弘行琳雅(花押)

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(画像転載元:https://www.touken-world.jp/search/9532/)



③樋はこうやって入れている

こんな道具を使って地道に溝を入れていくんですね。


④樋先が曲がっているのは研ぎ減っているから?

時々表と裏で樋先の形が異なる場合を見かける気がしますが、これは研ぎ減った事が理由かもしれないと「つるぎの屋」さんが見解を述べています。
なるほど~。


⑤後世になって入れられた樋もある

樋も難しい所があり、製作当初は無かったのに後で追加されるケースもあります(後樋)。
使いやすくする為(軽量化の為)に後から入れる事もあるでしょうが、中には鎬地のフクレや鍛え割れといった疵を隠す為に施された場合もあるようです。
フクレ等があると高く売れないので、そのような加工を施す事で疵を隠し高く売ろうと考えていたのかもしれません。
後樋の見分け方は私には分かりませんが、区上で丸留、角留したものに一番後樋が多いようです。

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(画像出典元:「刀の鑑賞(基本と実践) 著:中原信夫」)


⑥終わりに

樋が入っていると見た目がかっこよく見える他、刀を振った時に音が出るようになります。
鑑賞用の美術刀剣では振ることも無いと思うので関係ありませんが、居合をやられる方は樋の入った刀の方が扱いやすく、また音も出るので気持ちいかもしれませんね。
しかし樋の部分には汚れも溜まりやすいらしく、手入れも樋無しのものよりはしづらいようなのでそこは一長一短かもしれません。
樋には沢山種類があり、他にも沢山の情報が眠っているはずです。
私もこの前初めて樋入りの刀を買ったので、樋についてもこれから勉強していき随時本記事でもまとめていこうと思います。


今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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