他人に愛刀を見せる時の注意点
私は仕事柄初めての人にも比較的愛刀を見せる機会があるのですが、世の中には想像だにしない行動を取る人が少なからず存在します。
今回は私が実体験した2つの事例を紹介します。
まさかこんな事はしないだろうと高を括っていた自分に非があるので、今は事前に自分の中の常識を捨てて注意事項を伝える事で事故は減りましたが。
愛刀をお持ちの方で初心者の方へ愛刀を見せる方へ、私の失敗体験を活かしてもらえると嬉しいです。
①渡した瞬間鞘を横にして力任せに抜く
これは本物の刀を手に取った事が無い方の話です。
刀全般について一切知識の無い方です。
刀を白鞘袋から取り出して、「この状態(白鞘に刀身が入った状態)で重さ体験してみます?」と白鞘の重さのみ確認してもらおうと手渡した瞬間の出来事でした。
「おぉ!これが本物の重みですね!」
と大声で感嘆したかと思うと、あろうことか間髪入れず下画像のように抜き始めました。(実際は白鞘です)
(画像転載元:https://s-avatar.jp/illust/view/cs00181751/?)
3cm程抜いた際に反射的に「ダメです!!抜いては!」と大声を出してしまったので、相手の方も驚いてたという次第です。
私の中での常識は、白鞘から刀を抜く際は一言「抜いて良いですか?」と所有者に聞く事でした。
扱っているのは真剣であり人を殺傷出来る「刃物」です。
世が世なら命のやり取りに使用されたもので、そうした物を初めて触るのです。
そのような状況であれば言葉が無くてもいきなり抜く事はせず丁重に扱うと考えたのが失敗でした。
実際私も5人目くらいで初めての事。
私がとっさに「抜くな」と言ったのは、ただ感情的になっているわけではなく理由があるのです。
鞘を横にした状態で勢いよく抜くと刀身が白鞘内でこすれて簡単にヒケ傷が付きます。
所有者はそれを知っているので刀身を傷をつけないよう細心の注意を払い棟のみスライドさせて抜いています。
傷をつけないよう日々気を付けている所有者をよそ目に、貴方の何気ない行為で一瞬で深い疵を刀につけるのです。
その疵の重みは所有者でないと分からないかもしれません。
付いた疵を取るのも高額(部分的に研ぐのでも数万円、全体を研がなければならない状態であれば20万円以上かかります)ですが、値段だけの問題ではなく、研げば「刀を減らす事=文化財を破壊する事」にもなってしまいます。
勿論事前に「勝手に抜いては駄目ですよ」と伝えていなかった私に落ち度があります。
が、刀を見せて頂く方も相手が大切にしている所有物を見せて頂くという気持ちは忘れず謙虚な気持ちで見て頂きたいものです。
②刀身を触る
これも初めての人に、白鞘を払い柄が付いている状態で渡した時の事です。
「へぇ~、これが本物の刀なんですねぇ。切れるんですか?」
と言いながら普通に刀身を指で挟むようにつまんでいる。
これには特に衝撃を受けました。
普通刃を触るか?
私の中の常識などどこかへ飛んでいきました。
刃を触ることは怪我のリスクが高く危険です。刀はかなり良く切れます。
それ以外にも素手で刀身を触ると刀身が錆びてしまいます。
幸い打ち粉や刀油は持って行っていたので、その場で処置をして事なきを得ましたが…。
③終わりに
今回2つの実体験を書きましたが、私はこの件があってからというものの、必ず最初に注意点を伝えた上で持ち方を教えています。
・刀身には触っていけない(怪我防止&錆び防止)
・振り回さない(怪我防止&傷防止)
・勝手に抜かない(怪我防止&傷防止)
・刀の前でしゃべらない(唾が飛ぶことによる錆び防止)
刀の所有者から見れば当たり前の事でも、これは言わないと伝わりません。
皆さんの大切な愛刀を見せる際は是非上記ご注意ください。
因みに5人いれば4人はこんな事は説明しなくても分かりますし、本物を前にしてこんな事はまずしません。
ですがいるのです。稀に。その稀が怖い。
特に教養や思いやりがない人は危険。それは話の中で見極めるのが一番ですが、初対面であればそれもなかなか難しい。
・刀を見させて頂く方へ
これは刀屋さんでも鑑賞会でも同じです。
今回書いたような事を実店舗でやれば厳重注意は間違いないですし、出禁になっても文句は言えません。
必ず刀と人には敬意を払い丁寧に傷つけないよう鑑賞して下さい。
貴方が触っている物は命のやり取りをしてきたものである事をお忘れなきよう…。
・刀を見せる方へ
全部が全部マイナスな事だけではありません。
マイナス面を加味してもそれ以上に見せて良かったと思う事も沢山あります
以下も合わせてお読み頂ければ嬉しいです。
今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
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