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歴史上一番の名刀展示会

2018年の「京のかたな展」で国宝刀剣19振に加えて重文や特重の名刀が沢山集まるなど素晴らしき展示会でした。
ついこの間まで刀剣博物館でやっていた特別重要刀剣の中でも更に出来の優れた物を並べた「日本刀珠玉の名品展」も圧巻の展示でした。

このような感じで過去には日本刀の展示会は沢山行われています。
ではその中で一番多くの名刀の並ぶ豪華な展覧会はいつ行われたか?

これは恐らく、昭和10年1月に高島屋で行われた「名刀展覧会」だと思われます。
国宝が40数点、重要美術品が80点以上、全体で250点程度が出品されたようでまさに規格外。

それまでは名刀がどのようなものが多くの人は知らなかったと言います。
しかしその展覧会をきっかけに名刀がどんなものなのか、という事を世間の愛刀家が知る事になったらしい。
またそれは刀屋さんも同じだったようで、「薫山刀話(著:本間順治)」にはあの展覧会をきっかけに刀屋の眼が開眼した、と述べています。


・展覧会のエピソード「名刀は夜動く」

その位未曽有の刀展示会は当時から相当な話題だったようで、手伝いの希望者も多かったようです。というのも、手伝いをすれば実際に名刀を手に取り拝見出来たというのです。
それもあり特に夜の不寝番(夜通しで刀を盗難などから守る)を希望する者は夜中の間刀を好きなだけ見ていられるという事で人気だったようですが、この時に「名刀は夜動く」という怪奇エピソードも生まれたようで。
刀の位置がなぜか少し変わっていたり、刀の設置場所が上下で変わっていたりなどが起きたらしい。
これは言うまでもなく不寝番の人が夜中に刀をこっそり鑑賞していたという事が理由だったようで。
国宝が40点もあったら夜通し鑑賞したくなる気持ち分かります^^;


・この展覧会で生まれた名刀図譜

この未曾有の名刀展示会では約250振程並んだようですが、その内の117振が「名刀図譜」と題した本にまとめられました。
この本は「日本の古本屋」などでも買えますが、以下リンク先の国立国会図書館デジタルコレクションでも見る事ができます。

(画像出典:日本の古本屋

またこの展示会を機に刀の撮影方法にも変化があったようです。
それまでは板に釘を打ってそれに目釘孔を引っ掛けた上で刀を逆さに吊るして遠くから撮っていたようですが、この展示会を機に写真についても研究しなさいと本間氏が大塚巧藝社の社長にハッパを掛けたのがきっかけとなり、今では主流の撮影方法である刀を下に置いて上から覗くような写真が始まったようです。


・終わりに

国宝の取り扱いが厳しくなった今、今後このような展示会が行われる事は恐らく無いでしょう。
不寝番になれば国宝を手に取れたなんて当時が羨ましすぎます。
刀の鑑賞会などでも国宝や重文が並ぶことも普通にあったようですね。
なんとも羨ましい時代です。
あぁ羨ましい。
羨ましいという言葉しか出てきません。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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