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大事なのは位列を間違えない事

刀を観る時に作者は当てられなくても良いが、「刀の位列を間違えてはいけない」と聞いた事がある人もいると思います。
これはどういう意味なのでしょうか?

①位列とは

位列とは刀の作者の等級の様なもので、古刀だと「本朝鍛冶考」や「掌中古刀銘鑑」、「新刀弁疑」などで紹介されています。(「刀剣要覧」より)
ただ刀の位列の付け方は時代毎に評価が変わる事もあります。
そこで、昭和に刀の鑑定や研磨をしていた藤代義雄氏が古書に頼らずに現在の角度、独自の視点を持って刀工の位列を付けて、それに弟子の柴田光男氏が補足した一覧が現代の位列となっているそうです。
上から「最上作」「上々作」「上作」「中上作」「中作」の五段階に分けられます。最上作にいくほど評価が高いとされている、という事だと思います。
つるぎの屋さんのサイトにまとまっているので興味のある方はご覧ください。

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(画像転載元:つるぎの屋 古刀位列一覧


②位列を間違えてはいけない、とはどういう事か?

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これは昔鑑定会に参加した際に教えて頂いた内容です。
例えば茎を隠された状態の相州正宗の作が出てきたとします。
それに対して貞宗や行光と入れた場合、これは正解(同然)として扱われます。
一方、例えば郷義弘(越中)や筑州左文字(九州)、来国次(山城)などと入れた場合はどうでしょうか?
場所は相模と違いますが「位」が全て「最上作」なので位は外していません。
言い換えれば「刀の美しさの判断」は外していない事になります。
ですが、仮に同じ相州であっても綱広と回答した場合、綱広は位列でいうと「上々作」なので、正宗の「最上作」と位がずれている事になります。
(最上作>上々作>上作>中上作>中作、の順)
これは「刀の美しさの判断」がずれているという見方も出来ます。


難しいですね。。
そもそも刀には位が低くても傑作で最上作と遜色ない刀もあるわけで、そんな中で刀工に位列を付ける事自体が至難の業なはずです。
因みに私のよく行く刀屋さんなどでは特重指定のものと保存指定(特保にも合格しない)のものを間違えてはいけないという意味で使われています。(綱広でも出来が傑出している物は正宗の下位作より美しいという見方)
私もそちらの考えの方が共感します。
位列を間違えてはいけない、は人によりニュアンスが様々なようですが、現代では後者(出来を見誤ってはいけない)の方が一般的なのかもしれません。


③どんな時に特に位列を気にするか

これは私の場合ですが、個人の御刀を拝見させて頂いた時などは特に気にする気がします。
鑑定家ではないのでその刀が誰の作かを当てる事が出来ないのは良いとして、外すにしてもその刀がどの位美しい物なのか、という美的感覚部分を外してしまうと、あぁこいつ分かってないな、と思われてしまう可能性があります。
分からないから取りあえず最上作の粟田口吉光と言っておけばとりあえず失礼ないから良いか、と言えばそうでもなく。
確かに失礼は無いかもしれないですが、出来があまりにも違う作だった場合、同様にあぁこいつ分かってないな認定を受けてしまう可能性がある。
そう思われると、この人に良い刀を見せても分かってもらえないから出すのやめようと思われ見れたはずの名刀が見れなかったなどという事に繋がる事もあるかもしれない。
勿論そんな事関係なしに普通に名刀を見せてくれる人もいる。
でも色々な人がいるので位列(少なくとも出来について)は間違いないに越した事はないと思う。

だけども基本的には何に見える?と言われない限りは答えない方が無難なのかもしれない。
知ったかぶりをしない、人の刀を貶めるような発言をしないなどの事の方が遥かに大事な気もします。
なんとなくですが、女性から「何歳に見える?」と質問されるような心境と似ている気がする…。

④終わりに

日頃の訓練というか例えば刀の鑑定会に出た時は、個銘を当てる事よりも製作時代と出来を外していないかを個人的には重視するようにしています。(それが正しいというわけではないですが)

他にも鑑定刀の中でどの刀が一番出来が良いか(美しいか)を自分の中で判断して、解説の時に何の指定を受けているかを気にしたりもします。
例えば5振り中2振とても美しいと感じる刀があったとして、その2振りのみが特別重要刀剣、他の3振が重要刀剣以下だったりすると嬉しい的な遊び。(重要刀剣でも特重クラスの刀もあるので一概に悪いわけでは勿論無いですが、特重が美しいは分かりやすい指標ですので)

とはいえ私もまだまだ外すことは多いので、これからも鑑定は出来なくても出来を外さない事は意識して刀を観ていきたいです。
位列だけで刀を見るのは正しいとは思いませんが、位列というものが出来たのもこれまた歴史。
最上作には美しいものが多いというのは事実なのだろう。
でも何度も書くが、位列が低くても美しい刀は存在する。
世の中には位列第一主義の人もいますが、個人的には位列は知識に留め、刀そのものの美しさで判断すべきではないかと感じる所です。

いやはや刀は難しい…!

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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