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直刃に始まり直刃に終わる

昔からよく言われてきた言葉のようで、刀初めて買う時は直刃から始まる人が多く、色々な刀を所持した後もやはり最後は直刃に落ち着く、という格言のようなものです。
…が、最近はどうやら乱れ刃の方が人気があるらしく、乱刃に始まり直刃に終わる、という方が合っているのかもしれません。

得てして人間は変化のあるものが好きらしく、直刃のように一見見た目に変化がないものはつまらないと考えてしまいがちのようです。
しかし実は直刃の中にも細かい様々な変化があって、これを楽しめるようになるととても魅力的に思えるのだとか。
乱刃を「動」と表現するなら、直刃は「静」。
作風としても目指しているところが全く違うように見えます。
刀屋さんに聞くと、直刃は作るのが簡単そうに見えて実は一番難しいのだとか。刃文が真っ直ぐな分誤魔化しがきかない(刃のどこかに破綻があると目立ってしまう)のが理由のようです。
その為名工は直刃がやはり上手らしい。
いや、直刃が上手いから名工なのかもしれません。
聞いた話ですが、例えば濤瀾刃で有名な助広の作で重美指定のものは実は直刃が多かったりと、評価されていた作が必ずしも人気の刃文とは限りません。
それだけ直刃というのは見所が多く、人を惹きつける何かがあると言えそうです。
直刃の見え方も物により様々なので、今回いくつか見え方を紹介していきます。

①色々な直刃

※画像はYuhindoさんのものになります。

直刃は古刀で言えば山城伝(粟田口や来)や大和伝の刀に多く見られる気がします。
新刀で言えば肥前刀や虎徹、井上真改あたりでしょうか。
ただ先に挙げた津田助広も直刃を焼いているなど、新刀以降になると流派によらず多くの刀工が焼いている印象があります。

・古刀(粟田口吉光)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/awataguchi-yoshimitsu/)

・古刀(青江次直)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/aoe-tsugunao/

・古刀(青江貞次)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/aoe-sadatsugu/

・古刀(来国光)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/rai-kunimitsu-2/

・古刀(宇多国吉)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/uda-ikkin-tanto/

・古刀(左文字)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/samonji/

・新刀(肥前国忠吉)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/hizen-tadayoshi/

・新刀(平安城長吉)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/heianjo-nagayoshi/

・新刀(肥前忠国)

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(画像転載元:https://yuhindo.com/kazetan-tadakuni-katana/

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最後のは作って頂いた短刀です^^

②終わりに

直刃は真っすぐなイメージが強かった方も刃の中に色々な景色が見えたのではないでしょうか?
これに地景も合わさる事で、流派独特の味わいが出てきます。
以下の3振はどれも詰んだ肌と表現される出来ですが、肌の見え方が若干違うのがお分かり頂けると思います。

・吉光

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(画像転載元:https://yuhindo.com/awataguchi-yoshimitsu/

・来国光

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(画像転載元:https://yuhindo.com/rai-kunimitsu-2/

・肥前国忠吉

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(画像転載元:https://yuhindo.com/hizen-tadayoshi/

どれが良いとかではなくこれは個人の好き嫌いによるところですが、これだけ刀は一つ一つ個性が違うことが伝わると嬉しいです。
そして綺麗な直刃は区から切っ先まですっと破綻なくまとまっていて見ていると心が落ち着きます。
動きのある乱れ刃、燃え盛る様な刃文の丁子、落ち着く直刃、どれも良い所があります。
個人的には「直刃で終わる」というのは、人間歳を重ねるにつれて考えも達観していき、心も落ち着く人が多いので刀もそれに合わせて落ち着いていくのではないか?と勝手に想像しています。
逆に高齢な方で一文字のような激しい丁子刃が好きだったりするとまだまだ現役で精力的な方なんだろうな、と想像しています。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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