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初期刀が真面目な作で良かった

思い返せば図書館で刀剣本の入門書を見たり、ビッターズ(当時のオークションサイト)で画像だけ見ながらいつか欲しいなと感じていた中高校生時代は大切先の刀や薙刀直しのような形の刀が好みで欲しかった。
刀工銘は有名所しか知らなかったが刀身の姿だけ見て好みが決まっていた。
ただ刀工銘に興味が無いかと言えばそんなことも無く、虎徹や村正といったゲームによく出てくる刀工作には漠然とした憧れはあった。
しかし学生時代は出せても15~20万円位の資金が限度。
偽徹や偽正でも流石に買えない。(今思えば買わなくて良かったのだが)

月日は流れ、30歳になり実際に刀を鑑賞出来るイベントに参加し、実際に刀を手に持ってみると全てが美しく見えた。
手にひんやりと伝わってくる鉄の感触や重み、手に付く丁子油の匂いは遂に日本刀を持てたという喜びで一杯だった。
その興奮からか、刀身姿は覚えているもののどんな刃文をしていたかなどはあまり覚えていない。

それから暫くして刀剣店に行き様々な時代の作を見せて頂くと、ちょっとずつ好みが出てきた。
匂口が深く明るく冴えた刃が目に飛び込んでくる刀、匂口が線のように細い刀。地鉄まで楽しむ余裕は無かったが、時代毎の姿や色々な刃文を見る事で徐々に自分自身の好みが分かってきた。
中高校生の頃は大切先のものや薙刀直しの刀に憧れていたが、色々見て行く中でごく普通の姿(中切先でほどよく反りのある刀)でのたれ刃の刀が好きなんだと感じた。
今思えばマンガで描かれる事の多い刀の姿に憧れがあったのかもしれないと思う事がある。
小学生頃は「るろうに剣心」が好きだったが、中高校生時代は「SAMURAI DEEPER KYO」に物凄くはまった。最高の漫画であった。

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(画像出典:「SAMURAI DEEPAER KYO 上条明峯」)

他にも柳生連也武芸帖など渋めの漫画も読んだりしていた。

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(画像出典:「柳生連也武芸帖 とみ新蔵」)

戦闘シーンも好きだったが、何より刀が出てくる漫画が好きだった。
ゲームで言えば「侍道」という刀を集めながら戦闘出来るゲームにはまった。侍道4まで全作楽しませて頂いた。まさに神ゲー。

Youtube「牛沢【侍道2実況】一撃死モードで奉行所の犬になる#1」


刀そのものに興味を持ったきっかけは幼少期に祖父の家にあった拵でチャンバラしたことや小学生の頃にたまたま行ったデパートで行われていた刀即売会だが、その後のモチベーション維持で言えば漫画やアニメ、ゲームのお陰だった事は言うまでもない。
勿論武士や侍をテーマにした映画も好きだった。ラストサムライとか。

そんなこんなで今まで漫画や画面越しにしか見ていなかった刀が手元に来た時の喜びというのは計り知れないものがあったわけだが、今思うのは高校生の頃に15~20万円程でなけなしのお金を使って刀を買わなくて良かったという事だろうか。
もしそれが真面目な作でなかったら今かなりの遠回りをしていたかもしれない。例えば正真物の300万円の刀を1振買うのではなく、オクで偽銘や繕いだらけの30万円位の刀を10振位買うとかしていたかもしれない。
何より購入時やその後の刀購入にアドバイスを頂けない点が一番の損失だろう。
教えてもらえるのとそうでないのとではその後の理解度のスピード感がまるで違う。刀剣店で買っていれば色々教えてもらえる。
言葉がなくても真面目な良い物をお店で沢山見せて頂ければそこから感じ取れる事がある。そうして真面目な作による地盤固めが出来れば自分なりの判断も少しづつ出来るようになってくるのではないか?
土台作りを失敗すると修復に時間が掛かる、とは良く言われる。
鑑賞会で刀を見るのも良いが正直私のような素人が数分見ただけではその刀の真の良さは分からず、やはり手元に置いて毎日見る事で分かってくることが多いのも事実。
が、その手元に置く刀が変な物だったら目がどんどん侵されて土台がぐらつく。なので目が侵されないように真面目な刀だけを手元において毎日反復することで頭に真面目な作のイメージを定着させたい。

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初めて刀を買う時に真面目で良い刀が買えるかは本当に運ゲーに思う。
それが仮に刀剣店であっても、全てが全て良いお店とは限らない。
刀剣店であればオークションなどに比べて遥かに安全な可能性は高いのは言うまでもないが。
今なら思うが「虎徹どこの店にあるかな~」と探すよりも、まずはお店を色々周ってみてこのお店だと信頼できそうだ、ここの人になら騙されても後悔しないというお店を自分で探して、それからそのお店の方に虎徹が無いか聞く方が良いと思うのです。

そして刀を手に入れて終わりではなく、刀を手にいれてから更にまた次の課題なり新しい視点が見つかるわけですが、その都度やはり勉強したくなる。
そんな時に刀剣店の方に勉強したいので見せてくださいと言うのは、(毎回買えるわけでもないので)相手の貴重な時間を奪う事になり大変申し訳なく思ってしまうのですが、その時に快く見せて下さるお店だとここを選んで良かったと思えたりします。
色々教えて下さったお陰で少しづつではありますが、地盤が出来上がりつつあるのを感じます。(鑑定が出来るという意味ではない)
出来る事ならこれからも真面目な作に囲まれて生活したいものです。

1点、「真面目な作≠高い刀」では無いことはご留意ください。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

1振目購入については色々ハードルも高かったのですが、その時の体験談を書いていますのでよろしければこちらもご覧ください。

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

プロフ

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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