短編小説「うわき国広」を読んで
個人的に好きな日本刀短編小説に「うわき国広 / 山本兼一」がある。
これは「狂い咲き正宗 刀剣商ちょうじ屋光三郎」という本に収録された一つである。
・「うわき国広」のあらすじ
5千石を取る2人の旗本がいた。
虎徹の刀を愛する栗山越前守と、堀川国広の刀を愛する内藤伊勢守。
この2人はいつも虎徹と国広どちらの刀が良いか押し問答をしていた。
2人は刀剣商に頼みそれらの刀を集めては自慢し合っていた。
そんな2人が何とかうまくやって来れたのは、2人の間である決め事があったからだ。
お互いが互いに求める刀を手に入れる事があったら、相手に渡すという約束である。(つまり栗山が国広の刀を手に入れたら内藤に渡し、内藤が虎徹の刀を手に入れたら栗山に渡すという約束)
そんなある時、虎徹好きの栗山を訪れた刀剣商は、屋敷に通されて虎徹の数々の名刀を見させてもらっている中に「国広の傑作」がある事を目にする。
※(ここからネタバレ)読みたくない人は引き返してください。
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そこでその国広の刀を約束に従って内藤に渡すのか聞いたところ、栗山は渡さないと言う。
理由を尋ねると、あいつのどの国広より良い物を俺が持っているという優越感が良いのだ、と。
しかしある時、国広の傑作を隠し持っていた事が内藤にばれてしまう。
そこで刀を抜くほど内藤が激怒するが、実は国広コレクターの内藤も相手が欲しがる虎徹の傑作を隠し持っており、それを刀剣商から告白される。
つまり内藤も栗山と同じ事をしていたのだ。
それで晴れて最後は2人がその刀同士を交換する、という話である。
そして実はこうした事が過去に何度もあって今それぞれの蒐集品になっている、というオチが付いている。
・納まる所に納まる
この話では最終的には虎徹コレクターの元に虎徹が集まり、国広コレクターの元には国広が集まっている。
勿論この話はフィクションであるが、日本刀は納まる所に納まるように思う。
村正コレクター、正宗コレクター、傑作ばかり集めるコレクター、世の中には億単位のお金をポンポン動かして買っていく信じられないほどの富裕層がいる。
そして登録証の付いている約260万振の日本刀の内、超の付く名刀は1000振も無いだろう。
そのような数の中でよくもまぁ名刀が買い占められないものだと不思議に思う事がある。
これは刀剣店によっては売るのをセーブしている人がいるからなのだろう。
そういえば最近中国などの富裕層をターゲットにした刀詐欺というのが流行っているらしい。富裕層はお金は沢山持っているのでいきなり刀の一級品を買い占めようとするらしい。
が、刀の知識があるわけではないので、そこに偽物の刀を売りつけられるという被害が多発しているらしい。
このようにお金で取りあえず買おうとした人の下に名刀は集まらず、刀が好きで勉強した人の下に名刀が集まるという傾向はあるのだと思う。
勿論最初に良い人に出会っていたら良い刀を紹介してもらえることもあるだろうからそこは運なのだろう。
周りの愛刀家の方を見ていると言葉では説明しづらいがその人に何となく合っているような、そんな刀が納まっているような気もする。
派手な人には派手な刀が。尖った人には尖った刀が。落ち着いた人には落ち着いた刀が、などなど。
という事は裏を返せば自分の元に集まった刀を通す事で自分という人物がどのような人かを客観的に見る事がもしかしたら出来るのだろうか。
刀は自分を映し出す鏡なのかもしれない。
尚「うわき国広」は以下の本にも収録されています。
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
(※2023.6.17追記)
なんとフォロワーさんから教えて頂き、これが実話である事が判明しました!詳細は以下。
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑
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