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準特別重要刀剣が誕生する日も近い?

まず「準特別重要刀剣」なんて物は存在しません。
これは私が勝手に作った造語で、現在存在するのは保存刀剣、特別保存刀剣、重要刀剣、特別重要刀剣の4種のみです。
しかし今後10年位で何となく登場しそうだなと感じているのが、重要刀剣と特別重要刀剣の間に位置する指定。
「準特別重要刀剣」的なものが新設定されそうな気がしています。
という事で今回はそれが生まれるのではと考える個人的な理由を書きます。

①審査費用は日刀保の重要な財源になってる

まず1番押さえておくべき事実ですが、刀の審査費用は日刀保の重要な収入源となっています。
以下表は令和元年4月1日~令和2年3月31日までの経常収益が載っています。

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(画像出典元:日刀保 令和元(平成31)年度事業報告及び決算報告

これを見ると、当年度の事業収益4.89億円のうち、3.54億円と、事業収益の約72%が鑑定審査費によるものという事が分かります。
(上表の保存刀剣等鑑定会受取会費というのは保存刀剣審査と特別保存刀剣審査料を、重要刀剣等指定会は重要刀剣審査と特別重要刀剣審査料を指しいていると思われます。「当年度」は恐らく重要刀剣指定のみの金額。)
なので鑑定審査が如何に日刀保にとって大事なものかが分かると思います。
因みに鑑定審査費は申請費と合格した後に納める合格費用の2種納める必要があります
なので合格数が減っても収益は下がりますし、申請数が減っても収益は下がります。
なので日刀保からすれば、合格数のある程度の維持と、申請数の確保が大事と言い換える事が出来そうです。

この事からこれらが難しい状況になった時鑑定審査による収益が減りそうな状況が見えた時)、現行の審査方法や料金体系が変わる可能性があるとも言えそうです。

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②合格数をある程度維持する為にたぶん合格刀剣の質は落ちていく

次は最近合格した刀剣の質の話です。
例えば重要刀剣指定制度は始まって去年で66回を迎えています。
良い物は早い段階で指定されていくのが世の常なので回数を重ねるほど良いものが減っていくのは自然の流れかと思います。
勿論新しく発見される刀剣や、今までの所有者が審査に出したがらなかった刀剣がふらっと出てくる事もあるので、最近の指定だから良くないという事は決してありません。
しかし良いものは数に決まりがあります。
今までと同じ基準で審査をすればいずれその基準に満たないものばかりに。

先に書きましたが合格数が減れば収益は減ります。
そこで合格数をある程度維持しようとすると、審査の基準を相対評価にして全体のランク自体が低下、言わば審査基準を甘くする他ありません。
それを裏付けるかのように最近の重要刀剣指定を見ていると、無銘の刀がやたらと多くなっています


③同じ指定品の中で質に大きな差が生まれると

あまり微妙な物を重要刀剣に指定し過ぎると、重要刀剣というブランド自体が安くなっていきます。重要刀剣指定がスタートした段階では特保クラスだった物がどんどん重要刀剣になっていくわけですから。
需要が供給を上回っていれば話は別ですが、一般的にブランドが安くなっていくと重要刀剣だから高く売るという事が難しくなってくるはず。
指定初期の重要刀剣クラスは現在の特重になっていると解釈する事も出来ます。つまりどんどん上の指定にスライドしていく。
しかし時間と共に今度は特重でも同じことが起きていく。
でも特重の上には現状指定が無く、しかも特重は重要文化財や重要美術品に匹敵するという基準がある為、早々簡単に指定する事は矛盾を生み出す事になり出来ないはず。
でも出来ないと合格数を絞らないといけない。
合格数を絞ると収益が減る。
なので日刀保が鑑定審査収益を維持しようとした場合考えられそうな事と言えば、合格数を絞っても良いように審査料を上げる事、新指定を設定する事の2つが考えられそう。

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④新指定を設定する場合

改めて今の指定は以下の4つです。右に行くほどランクが高くなります。

保存刀剣 → 特別保存刀剣 → 重要刀剣 → 特別重要刀剣

・特重の更に上の新指定を設ける可能性

という事でまずは特別重要刀剣の更に上の指定を設ける可能性について考えて見ます。
もともと重要文化財や重美に匹敵する最高峰クラスの日本刀を指定しているのが特別重要刀剣なはずです。
その更に上となると国宝クラスに匹敵するわけで指定される刀は本当に一握りなはずです。
最初は良いかもしれませんが審査基準を満たさない刀はいずれすぐ登場する事になるので先にあげた質の低下が早くに起こる事が想定され、これは現実的では無さそうです。
審査料50万円2年に1度、1~2振程度だけが合格する、皆夢見て300振り位審査に集まる(倍率150~300倍)などえげつない設定にすれば今の重要指定鑑定費位にはなるかもしれません。
うーん、でもあまり現実的ではなく収益的にもあまり望めなさそうな気もしてきます。

・特保と重要の間に新指定を設ける可能性

次に特別保存刀剣と重要刀剣の間に準重要刀剣のような指定が誕生するかについて、これもパッと考えるとありえそうです。
ただ刀剣商などからすれば刀剣需要が下がった事で重要刀剣自体の値段が下がりつつある現状を見れば、利幅が減る事になるので愛刀家が増えて刀剣需要が増えない限りメリットが無くなかなか受け入れられなさそうです。

・重要と特重の間に新指定を設ける可能性

そういう意味では重要刀剣と特別重要刀剣の間の指定、つまり「準特別重要刀剣」のような指定の方がまだ重要刀剣の中での上下を明確にするという意味で、刀剣価格の値上げの余地があり現実的にあり得るかもしれません。
実際に重要刀剣の中でも300万円程度で買えるものもあれば、1500万円近くないと買えない物もあります。
それだけバラツキがあるという事かもしれません。


⑤その他考えられる未来

残り考えられるのは審査費自体の値上げです。
現行の4指定のまま、それぞれの審査料が上がる感じです。
コレクターや刀剣商、至るところからクレームもある事でしょう。
普通に考えれば段々と合格数は減っていくはずなので、審査収益を維持する為に審査料が上がっていくと見る方が自然かもしれません。

因みに過去日刀保では貴重刀剣、特別貴重刀剣、甲種特別貴重刀剣という指定を全て廃して、今の4指定に切り替えた歴史があります。
その時の事は私は知る由もないのですが、せっかく取った指定を全て廃止するとは何事だ!というクレームもかなり多かったようです。
そりゃそうですね。
なので流石に今の4指定を廃して新たに全て置き換える事はまず無い、とは思います。

さてさて皆さんはどんな未来が待ち受けていると思いますか?

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