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入札鑑定を集計したメモがあれば鑑定刀をイメージできる説

今回は入札鑑定の集計表(上級者の方々のもの)を見るとその刀がどういった姿をしているのか、どんな刃文をしていて地鉄がどうで…のような事がイメージできるのではないかという事を思いついたのでその検証です。
まぁあれですね、実物を見るのが叶わない時のイメトレになるかと。

以下は盛光堂さんのYoutubeで流れていた動画のキャプションに文字を追記した物です。

Youtube日本刀の美・第一回 〜前田日明と日本刀の美〜 エピソード3「入札鑑定会とは」より

このメモは鑑定会の先生が入札鑑定に挑戦したA~Fさんの回答を一覧にメモしたものになります。(普通は先生しか見れないものなのでこのゲームは普段はなかなか出来ませんが)

①このメモからどんな鑑定刀かを想像してみる

・1号刀をメモからイメージしてみる

まず1号刀であるが、1札目に粟田口国吉の票が多い。
小板目で地沸が良くついたような非常に精美な地鉄をしている作なのだろうか。国吉という事は2重刃が見られるのかもしれない。
一方で豊後国行平の票も入っていることから何か彫物があるのかもしれない。
2札目で景光と入れている人が2人、光忠といれている人が1人いる事から備前伝の刀と推測される。豊後刀が1人入っているが、備前伝の入札が多いので恐らく入札途中だろう。
そういう視点で見ると匂出来の刀で映りが現れているのかもしれない。
光忠の票もあることから刃は明るく冴えていそうな気もする。
という事をメモから想像してみましたが果たして。。

結果は…。

Youtube日本刀の美・第一回 〜前田日明と日本刀の美〜 エピソード3「入札鑑定会とは」より

まさかの光忠の剣でした。光忠の剣はこの1振のみとレアすぎる。
後に重要文化財に昇格した剣。
鎬がとても高いらしいです。
なるほど、粟田口のように見えるのですね。
めちゃくちゃ地鉄綺麗じゃないですか!!

・2号刀をメモからイメージしてみる

Youtube日本刀の美・第一回 〜前田日明と日本刀の美〜 エピソード3「入札鑑定会とは」より

2号刀は新藤五国光、貞宗、来国光、吉光、の札が入っていることから短刀という事が想像できる。
なぜなら新藤五国光と吉光にはほぼほぼ太刀が無いので入札する人は少ないと予想した為。
次にCさんが来国光といれた後に正宗といれているので、潤いのある地鉄に地景や金筋などの働きがにぎやかな刃文なのかもしれない。
そしておそらく素剣などの彫がありそう。
因みに新藤五は相州伝の祖なので、この刀は新藤五あたりではないか?と予想。

結果は…。

Youtube日本刀の美・第一回 〜前田日明と日本刀の美〜 エピソード3「入札鑑定会とは」より

やはり!
確かに来国光にも貞宗にも似たような姿があるような気がします。
画像から見るにきっと梨地肌なのでしょうか。


・3号刀をメモからイメージしてみる

Youtube日本刀の美・第一回 〜前田日明と日本刀の美〜 エピソード3「入札鑑定会とは」より

最後は3号刀です。
新藤五、兼光、景光、来国俊、了戒、粟田口国吉など一番意見が分かれています。
古刀なのは間違いなく、かつよほど出来が良いのでしょう。
Bさんが備前長船兼光の後に粟田口国吉といれている事から備前ではないのでしょう。つまりDさんの景光でもないという事になります。
またCさんが来国俊の後に粟田口国吉といれていることから来派でもないのでしょう。
来派でないという事はEさんの了戒も外れそう。
Aさんは来国光と2札目に書いているものの、Cさんの来国俊から来派は間違いであった事が分かるので、これらから粟田口派の誰かの作という事が分かります。
という事で予想ですが、大摺上げ無銘の粟田口国吉あたりでしょうか。
国吉といれるだけの何か極めのポイントが何かあるのかもしれません。
代表的な国吉の特徴で言えばやはり二重刃な気がしますが、それらが見て取れる刀なのかもしれない。
兼光という札が入っていることからも切先は大きいのかもしれない。
そして景光や来国俊の票が入っている事から映りのようなものも見られたの可能性もあると考えられそうです。

という事で結果は…。

Youtube日本刀の美・第一回 〜前田日明と日本刀の美〜 エピソード3「入札鑑定会とは」より

なんと短刀でした!粟田口則国の作。
むしろ2号刀とそっくり。
しかも御物。。!


②終わりに

という事でメモから読み取るのも意外に面白かったです。
因みに今回のようなメモというのは普段は鑑定会を取り仕切る人しか見れません。なので今回したような事を実際出来る機会は恐らくほぼなく、実際は何の役にも立ちません。
加えて入札鑑定に参加している人が初心者ばかりの時には難易度がかなり上がるゲームですが、今回のようにベテランの方ばかりが参加している会ではこのようにメモから鑑定刀をイメージする事が少なからず出来る気もします。
このようにメモから人の思考過程や刀がどういった物かを想像できるのは意外に面白く感じたので今回ブログに書いてみました。
紙は語りますね。

因みにこのゲームの事は置いておいて、鑑賞会に愛刀を持っていく楽しみの一つというか、勉強になりそうな事としては、例えば茎を隠した自分の刀にどんな入札が入るのか、というのは個人的にはとても興味があります。
特に私は今現在無銘の刀ばかりです。
無銘には鑑定書が付いておりそれはそれで疑うつもりもなく、それで良いのですが、それ以外にも鑑定会に参加している多くの人がその刀をどう見るのか?という事に興味があります。
例えば無銘太刀が日刀保の鑑定で来国光に極まっていたとして、その太刀を鑑定会に出し例えば5人のうち3人位が来国光に入れるのか、それとも3人くらいが新藤五に入れるのか、はたまた全く違うのか。
全く違うならどこを見てそう思ったのか、この辺りを聞く事で愛刀の新しい見方のヒントが得られるかもしれないと感じる為です。

今回の元動画は以下から見れますので、興味ある方は是非ご覧ください。
入札鑑定の様子が見てとれて面白いですよ!


今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。


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