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サントリー美術館開館60周年記念「もののふの心」展を見て

サントリー美術館開館60周年記念として開かれたのが今回9/15~10/31で開催されている「もののふの心」展。
という事で昨日見に行ってきました。

平日でしたがもの凄い人でゆっくり鑑賞できる雰囲気ではありませんでしたが、日本刀というものを多角的な視点から見つめる事の出来る素晴らしい展示でした。
因みに展示品の写真撮影は全てNGです。

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①刀を多角的に見つめる事の出来る展示構成

今回刀剣の展示は名品ばかりが並んでいますが、その中でも有名な所と言えば、「膝丸(薄緑)」、「秋田藤四郎」、「義元左文字」、「骨喰藤四郎」でしょうか。
何といっても面白いのは刀だけではなく、様々な合戦絵巻や逸話をもとにした酒伝童子絵巻から刀の使われ方や、刀がどのようなものとして人から捉えられていたのか、
また、馬を調教している場面の絵巻だったり、研師や柄巻師など刀職達の暮らしぶりが描かれた絵巻などから、刀に関わる当時の人達の暮らしぶりにもフォーカスされている展示でした。


②展示品について(刀剣)

・膝丸(薄緑)

茎に「〇忠」とあり、〇の部分が潰れて見えないのは、銘が消されたものと思っていましたが、図譜の解説を見るとどうやらそうではないらしく、昔付いていた刀身と同じ素材の鉄でハバキを作っていた事からそれが影響してボロボロになったと考えられるらしい。
作風からは古備前光忠の父である近忠や、同派の実忠、家忠が作者の候補に挙がるとのこと。
優美な腰反り姿に映りが鮮明に現れていました。


・義元左文字

義元左文字は「京のかたな展」で拝見した以来でした。
今回は刀までの距離が近く、被災により金象嵌が溶けて茎に飛んだ金紛まで視認する事が出来ました。
再刃という事もあり、地鉄は白っぽく見えましたが流石の刃の明るさです。


・骨喰藤四郎

こちらも再刃という事でいわゆる粟田口の肌の質感とは違い肌は白っぽいですが、この360℃視認出来る展示ケースのお陰で刀身の両面の彫り物を見る事出来ます。
茎のとろけた様子も見る事ができ、刀身が火にさらされるとどういった茎になるのか、という点でとても良い勉強になりました。
茎が赤茶色になる、というのがよく分かります。


・秋田藤四郎

ちょっとライトがまぶしすぎて地鉄の色味がよく分からなかったのですが肌は立っているように感じました。
振袖茎に刀身が綺麗にまとまっており姿がとても美しい。
吉光の中では一番小振りだそうです。


・則宗(名物二ツ銘則宗) 足利尊氏佩刀

則宗といえば福岡一文字の祖。自分の中では幻の刀工位に思っているがこうして拝見出来て嬉しい。
今年は三井記念美術館でも在銘の則宗を拝見出来た。
今回の太刀は「宗」の字はよく分かりませんでしたが、「則」の細い鏨が肉眼でも捉える事が出来ました。
鎬筋を越えるほどに高く出た映りからは古さを感じられました。


・黒漆剣 坂上田村麻呂佩刀

見た目的にボロボロだったからかこの刀の前は全然人がおらず結構じっくり見れました。
直刀ですが、刀身の先が刃側に状さっているのが印象的。
また肌がとても立っており何となく古伯耆にも通じる所があると個人的には感じました。


・無銘剣(国宝)

普通剣と言えば短いものを想像していたのですが、これは2尺を越える長寸の剣。
美しさに圧倒されるものの、人が多すぎてあまりよく見えなかったのが残念。細直刃、切っ先は丸みを帯びているというよりは鋭い印象。
どちらかと言うと西洋の剣に似ている印象も受けた。


・祇園社御剣 出羽大掾藤原国路

八坂神社に奉納された三口のうちの一振。拵えもとても特徴的です。
この拵え実はとても面白い意味というか、国路ならではの新しい感性が現れているようです。
図譜の解説に記載あるので是非ご覧になってみてください。


・長刀 和泉守藤原来金道

これは武器として使われたものでは無くて、祇園祭の際に担ぐ飾りのてっぺんに付けたとされる長刀です。
刃長だけでも約1.3mととてつもなく大きい。
錆びているので肌などは分かりませんが、これだけ大きいのに他の通常サイズの薙刀と遜色ないほどに形がとても綺麗に成形されていた。
高い位置にあり見えないから少しゆがんでいても大丈夫だろう、という手抜きが一切感じられなかったのが、来金道の仕事ぶりを感じる上でとても印象的でした。


③終わりに

刀や絵巻の他にも鐔や甲冑なども展示されています。


今回の展示会でも図譜が販売されているのですが、今回の図譜の良い所は、刀の写真というよりも、前九年合戦絵巻や後三年合戦絵巻など戦闘風景が拡大図でとても分かりやすく詰め込まれている所にある気が個人的にはしている。刀の先端に討ち取った首を刺して馬で駆けている様子であったり、太刀を腰に携えて戦っている様子など見れば見るほど新しい発見があり面白い。また図譜の最終ページの解説も充実しているので、家でゆっくりと「ああそういう事か」と眺める事が出来るのも有難い。

刀だけの図譜も面白いですが、刀を多角的な視野で見つめる事の出来る図譜というのもとても面白いです。
興味ある方は明日までの展示会ですが、是非会場で購入されてみて下さい。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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