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モディリアーニと恋人ジャンヌの人生から学ぶ、本当に大切なもの

この文章は、水星逆行中に書きました。この期間は、過去を振り返る傾向が高まります。

最近、2007年に開催されたモディリアーニと恋人ジャンヌの展示の図録が出てきました。二人の世界観を演出したその展示は、素晴らしいものだったと記憶しています。

長い顔と首、白い目という特徴的なスタイルを完成させたモディリアーニ。そんな彼に追いつこうと、みずみずしい感性をキャンパスにぶつけたジャンヌの作品が並んでいました。

2007年に開催、モディリアーニと妻ジャンヌの物語展の図録

その二人の物語を追ってみましょう。年上の貧しい男性芸術家と年下の美術学生の少女は、14歳差にもかかわらず恋に落ちます。しかし、ジャンヌの両親から交際について猛反対を受け、二人は駆け落ち同然で一緒に暮らし始めます。

芸術家の共同生活。お互いをモデルにして絵を描き合い、愛を深めながら創作活動に当たっていたかのように見えましたが…。モディリアーニは画家としての才能はあるものの、絵が売れないため貧困生活から抜け出せず。ジャンヌも同様に、無名の画家として過ごしていました。

モディリアーニは、周りの友人から「あいつは本物の芸術家だ」と評されるほど、芸術に対して真摯に向き合っていたようです。そのせいか、知人から雑誌の絵描きの仕事に誘われた際に拒否した、という記録が残されています。生活に困っても、自分が望まない絵は描きたくなかったのでしょうね。

芸術家として高い志を持つモディリアーニですが、酒と薬物の影響により、暴力をふるうこともあったそうです。

そんな中、ジャンヌは二人目の子どもを身ごもります。彼女の心境を想像すると、経済的にも肉体的にもつらい中、不安な気持ちでいっぱいだったことでしょう。

しかし、モディリアーニは飲酒や薬物などにより持病が悪化し、この世を去ります。頼れる人は周りにおらず、お金もなく、小さな子とともに取り残された身重の少女ジャンヌ。ほどなくして、モディリアーニの後を追ってしまいます。

当時の私は、特にジャンヌの方に感情移入しました。愛する人との生活は幸せなものであってほしかったのに、現実はなんて非情なんだろう。小さな子どもを十分に食べさせるお金さえなく、親と仲たがいしたことを後悔したのではないだろうか。

そして、二人を追い詰めた一因に、芸術に没頭しすぎたことが挙げられるのかなと思いました。

私は昔少しだけクリエイター業界にいて、「絵を描くためだけに生きている」「描くのを止めたら自分じゃなくなる」と思っていた時期がありました。物作りに熱中していると、狭い世界に閉じこもってしまうんですよね。昔、お世話になった漫画家の先生が「描けないからといって、思いつめて死んじゃったらダメよ」とおっしゃったことを覚えています。

創作活動とは、自分との闘いです。世間の人々が普段意識せずにやり過ごしているようなことを、あえて正面から見つめて、苦しくなる場合があるんですよ。

今の私は文章を書いて暮らしています。あんなに好きだった絵をほとんど描かなくなって、絵のことを思い出さない日さえあるのに、何だかんだで生きているんです。いくら「これなしでは絶対に生きられない」と強烈な思いを抱いていても、未来には案外何とかなっているものなんですね。

なぜなら私にとって「絵を描くことが絶対」というよりも、表現することが重要だからです。この先、また絵を描きたくなったり、描かなくなったりするかもしれません。大事なのは、自分の好きなものの本質を理解することです。それに従って行動すれば心を満たせるでしょう。

以前stand.fmでも話したのですが、手段が目的になってしまってはいけませんね。私たちの目的は「幸福になること」だからです。だとすると、幸福になるための手段をいくつか持っておくと、そのうちの一つが行き詰っても、他のことで自分を豊かにできるのではないでしょうか。

過去と関連付けられる水星逆行期間、今回は大切なことを思い出させてくれました。


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