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異邦の箱庭(2024/03/11日記)

▼今私はホステルで外国人に囲まれながら日記を書いている。

▼今回は青春18切符を使って遠路はるばる東京にやってきたのだ。18切符を使うのも自分の意志で東京に来たのも何気に初めてである。それにしても休憩込みとはいえ片道10時間は流石にしんどかったな… 座っているだけとはいえそれなりの苦痛だった。

▼見知らぬ駅で降りて乗り換え、この作業を東京(の宿)まで大体10回近く行った。こうして書くと乗り換えが頻繁にあるように思えるが、実際には乗り換えと乗り換えの間には凡そ1時間ほどの間隔があるので全く忙しい感じがしない。ただうっかりしていると全然乗り換え忘れしそうな時があるので、イヤホンで聞こえるアラームを付けて対策していた。

文庫本を4冊ぐらい持ってきている

▼乗車している間はもっぱら音楽を聞いたり本を読んだり、事前にダウンロードしたVtuberの配信を見て過ごしていた。いやせっかくなんだから車窓からの風景眺めて鉄道旅の醍醐味を堪能しろよという指摘はご尤もなのだが、面白いことに車窓も眺めている内に意外と飽きてくるのである。私も最初は車窓という額縁に次々と差し込まれる見たことのない景色に魅了され続けていたのだが、名古屋を超えた辺りから急激に「景色を見ること」という行為そのものに飽きてしまった。車窓の景色は刻一刻と変化しているのに。うまく説明できないが、映画を見続けるとその内容如何に関わらず疲れて飽きる、「映画を見る」という行為自体に飽きが来る感覚にどこか似ている。

▼そういえば途中途中で地図アプリを開いていたな。今どの辺りなのかなと思って徐ろに検索かけて、あそこに見えるのは何山だの、そこにあるのは何タワーだのというのをやるのはかなり楽しかった。これが私の鉄道旅の楽しみ方なのかもしれない。

▼18きっぷは当日に限り乗降車し放題になっているので、途中で改札を出て休憩を取ることができる。座りっぱなしのくせして何が休憩だよと思われるかも知れないが、これは今回私も初めて知ったことだが、電車に乗り続けていると不思議と疲れるのである。特に尻と腰が痛くなる。身体が加速に付いていくことで負担が掛かっているのか?とも思ったが、考えてみれば座席の座り心地だけの問題な気がしてきた。

メニューに円盤焼きがあった

▼昼ご飯休憩を兼ねて浜松で一度下車し、友人に教えてもらった浜松餃子の店に向かう。浜松餃子はキャベツなどの野菜をふんだんに使用した柔らかな食感が特徴の浜松ご当地B級グルメで、他にも円形で焼き上げる、付け合せに焼きもやしを添えるなどの特徴があるらしい。へー、言われてみれば確かに食感そんな感じだったかもな…焼きもやしも添えられていた気がする。こんなに違いにわからない奴にご当地グルメを食べる資格は果たしてあるのだろうか、時々自分で自信がなくなる。

▼今回立ち寄ったのは石松餃子というお店だったのだが相当人気店だったらしく、私が退店する頃には入店する際の倍近い待機列が出来ていた。


▼静岡を抜けて熱海に差し掛かる。体感ではこの辺りから一気に時間の流れが遅くなった気がする。流石に鎌倉超えたかな…と思って地図アプリで調べると全然手前の大磯とかだった時は発狂しそうになった。疲労の蓄積が露骨に出始めたのも、車内が混みだしたのもこの辺りからだったので、鎌倉以東は今のところしんどいイメージしかない。

▼思っていた3倍は尻と腰に来る。正直侮っていた。帰りもこの痛みを味わうことが確定していると考えると今から憂鬱でしょうがない。価格と浪漫の代償である、仕方ない。しかしこれから湯治に行こうというのに事前に腰をやるのは、これは果たして丁度いいのか、ともすればマッチポンプなのかもしれない。


▼東京に近づくにつれ、車内に「都会の人間」が増えたように感じる。これはそれまでが田舎だったという訳ではなく、人間のバリエーションが増えたという表現が近い気がする。背広の大集団や個性溢れるファッションに身を包む人、外国人観光客の集団は存外地方では見られない。

▼東京に着いた。東京に縁のない人生だったので、何となく東京=有名人に会える(住んでいる)街というイメージがある。ので、勝手につい色んな乗客に対して期待をしてみたくなる。あの人は実は歌手さんで、あの人は有名VTuberかもしれない。可能性は無限大だ。ともすればFAKE TYPEとだってすれ違えるかもしれない。まあFAKE TYPEが電車使ってるのかは知らないが。


立体のまち

▼途中下車して久しぶりに会う友人の住む街に立ち寄る。まあこの友人もどうせ明日一緒に遊びに行くんですけどね。近況や作品づくりの話、最近のアニメ(特に「魔法少女にあこがれて」)にハマりすぎてやばいみたいな話を時間いっぱいしていた。オタクすぎて我ながらいたたまれなくなってきたな… 今にしてみると日高屋店内で横に親子連れがいる場でする話じゃなかったと思う。「魔法少女にあこがれて」は面白く素晴らしい作品だが、万人に手放しで話すにはあまりにも刺激的すぎる。

▼そうこうしていると宿のチェックインギリギリの時間になってしまった。最寄り駅から宿まで全速力で走る。最近こんなんばっかりだな私…


可愛い壁。作品だった。

▼走ったおかげでチェックインに間に合い、現在私は都内のオシャレホステルのラウンジにいる。周りを見渡すと外国の方ばかり(外:日=9:1ぐらい)で少し緊張する。このホステルにおいてはどうやら私のほうが異邦人らしい。扉の外は東京なんだけどなあ、不思議。

▼常に不安性な人間なので、正直上に置いてきた荷物が盗られないか不安でしょうがない。まあ価格の分多少サービスが犠牲になるのは仕方がないことである。ちなみに不安症の人間にとってホステルとキャンプはあまりリラックスできる環境ではない(セキュリティ的な意味で)。なのに私はキャンプを趣味にし、今ホステルに泊まっている。お前には整合性とかないのか?


▼来た当初、外国の方多いなあとビビっていると部屋をロックしている電子キーに無限に引っ掛かってしまった。そしてそれを見かねた外国人のお姉さんに電子キーの開け方を丁寧に教えてもらった。正真正銘心温まる優しい異文化交流のワンシーンのはずなのだが、全然電子キーに無限に引っ掛かっていた恥ずかしさのほうが勝るな…まだ恥ずかしいもん。



晴天

▼今日は旅日和と言わんばかりの引くほどの快晴だった。当時幼かったのであまり覚えていないが、13年前のあの日もこんな何気ない平和な空だったような気がする。当時帰宅した時にテレビに映っていた、後ろから迫る津波から必死に逃げる車の映像は未だにハッキリと覚えている。最初は映画の撮影かと思った。そうでなければ受け入れられなかった。

13年前のあの日、父が出張していた東京に今私はいる。意味の無い偶然に縋るように意味を見出したくなるのは私の悪い癖。

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