台湾のトップシェフ、アンドレ・チャン氏が表現する青森の魅力。(片倉真理)

台湾のカリスマシェフ、アンドレ・チャン氏が率いるファインダイニング「RAW」と青森県のコラボ、「青森周」が本日(12/15)から18日まで開催されています。メディア向け試食会へご招待いただいたので、リポートしたいと思います。

アンドレさんとリンゴのシャツを着てニッコリ笑う三村知事

記者会見では青森県三村申吾知事も登場。特産品のリンゴやホタテ、ゴボウなどのTシャツを重ね着されていましたが、会見中に一枚一枚と脱いでいき、会場を盛り上げていました。まさに「トップセールスとは何たるか」を目の当たりにした瞬間でした。

知事によれば、青森の方言では驚いたときや嬉しいときに「ロー」という言葉で表現するとのこと。奇しくもレストランの名前も「RAW」であるため、何度も何度も「ロー」と叫ばれていました。

4年前に始まった「青森周」はアンドレさんが青森を旅し、その魅力を料理で表現するという企画。この二年間はコロナ禍であったため、オンラインで交流。今年は久しぶりに現地を訪れ、青森の魅力を再発見されたとのこと。入り口には「リ:ディスカバー」と書かれた暖簾が掲げられていました。

息がぴったりと合った二人。

「青森周」のテーマは毎年異なりますが、今回は「reduce」、「recycle」、「rethink」という青森の暮らしに根付くサステナビリティ(持続可能性)に注目。「食材」、「環境」、「創意」、「文化」、「産業」、「工芸」、「生活」といった7つの切り口から7品の料理とデザートで表現されていました。青森では豊かな自然や伝統工芸を守るため、様々な創意工夫、努力が続けられているとのことで、アンドレさんは唯一無二の場所と感じているそうです。

特に印象的だったのは「お野菜クレヨン」をモチーフにしたミネストローネ。青森では見た目が悪い廃棄処分されてしまう野菜を再利用して、環境に優しいクレヨンを作る取り組みが行なわれているそうです。

アートのように美しい料理。紫蘇、牛蒡、山芋、トマト、トウモロコシ、葱などの野菜を使って再現しています。

そのほか、津軽地方に伝わる工芸「こぎん刺し」をイメージしたカシスソース和えの牛肉料理や郷土料理の「すしこ」や「きんとん」の要素を取り入れた料理なども。

カシスの甘酸っぱさが食欲をそそります。


菱形の模様が入った「こぎん刺し」の刺繍。こちらはカシスで染めた糸が用いられています。

特産品であるホタテ特産品であるホタテは北海道に次ぐ生産量とのことで、ホタテの殻の再利用に力を入れているそうです。このお皿だけでなく、お箸もホタテの殻の粉を用いたものでした。

ホタテの下は下北半島の伝統保存食であるジャガイモを用いた「かんなかけいも」です。

八戸の縄文文化から発想を得たという料理は、キノコやクルミなどを炭火焼きや燻製にしたもので、甘さとほろ苦さが混じり合い、味わい深い逸品でした。

アンドレさんは八戸では朝市できのこのスープを味わい、その後、「是川縄文館」で縄文時代の人たちがキノコを食べていたことを知り、1万5千年前の人たちと自分たちが繋がっているということに感銘を受けたとのこと。八戸での一日は特に忘れらない思い出になったそうです。


縄文時代の食事からインスピレーションを受けた料理。

さらに青森が誇るブランド米「青天の霹靂」を用いた料理も。これは人工衛星で撮影された水田の画像やアプリを使って栽培されていますが、アンドレさんは「人口が少ない土地で、最先端の技術を駆使し、最高品質のお米が作られているなんて素晴らしいですよね」と、大絶賛されていました。

外はパリパリにお米を揚げたもので、中にはタコが入っています。

デザートは白神山地のブナの森やリンゴ農園をイメージしたもの。アップルパイやコーヒーアイスのほか、ブナの年輪をイメージしたというバタフライクッキーが添えらえていました。
ご存知の通り、白神山地はブナの原生林で知られている世界遺産ですが、雪解けの水がブナの樹でろ過された後、リンゴ農園の灌漑に用いられ、さらにリンゴの木の枝が炭になり、炭火焼きコーヒーに用いられているとのこと。コーヒーには白神山地の水が用いられており、素晴らしい循環システムになっているそうです。

ブナの年輪を表した器とアップルパイ

このお皿はブナの天然林を有効利用するために開発された工芸品ブランド「BUNACO」のもの。アンドレさん自身もお皿づくりを体験されたそうです。

アンドレさんお手製の「BUNACO」。

同じテーブルにアンドレさんの旅をアレンジされた青森県庁の観光課の方がいらっしゃったので、アンドレさんとコラボするようになったきっかけを伺ったところ、「八年前に青森の物産を紹介する企画で色々な国のシェフを招いたのですが、アンドレさんが最も情熱があり、青森への愛が感じられた」とのことでした(素晴らしい!)。

彼女によれば、青森は人口減少や少子高齢化など様々な課題を抱えているものの、それらを解決するためにみんなで協力し合っており、ライフスタイルそのものがサステナビリティとのこと。アンドレさんにこのことを一番伝えたかったそうですが、この日、料理を味わい、自分たちの思いがきちんと伝わっていたことに感激されていました。

また、RAWはお酒のペアリングも評判ですが、昨日は特別に宜蘭のタイヤル族の「不老集落」で作ったアワ(粟)を原料にしたシャンパンもいただきました。アワを100%使用しているので、質がなかなか安定しないとのことで、完成までに二年半の歳月がかかったそうです。会場には醸造家の女性も来られていました。さっぱり爽やかな飲み心地がクセになるおいしさでした。

こちらは人気バーの「Room by Le Kief」とコラボした「Kon純米大吟醸」。発酵の過程で青森のリンゴの皮が用いられています

食事会の途中では台北在住のシンガーソングライター、馬場克樹さんも登場!「津軽海峡冬景色」をアカペラで熱唱してくださり、会場の皆様が美声に聞き惚れていました。

最後に、今回個人的に驚きだったのは、アンドレ・チャンさんが大のプロレスファンだったこと。アンドレさんの五日間の旅をまとめたYouTube番組の中でアンドレさんが猪木さんのお墓をお参りするシーンがあるんです。アンドレさんとプロレスが結びつかず、びっくりでした!
こちらの番組は旅に同行されたグルメ作家の高琹雯さんが制作したもので、アンドレさんのチャーミングな人柄がよく分かる内容となっています。日本語訳もあるので、ぜひご覧になってみてください。


コースはデザートを含めて全10種類でしたが、一皿一皿が驚きと発見の連続で、同時に青森への熱い思いも伝わってきました。五感で体験した青森のモノ、コト、ヒトを料理とデザートという形で昇華させているアンドレさんはアーティストそのもの。豊かな発想と尽きない探究心に圧倒されながら、青森の良さを再発見したひとときでした。

https://www.raw.com.tw/

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※料理の写真はすべて「RAW」の提供によるものです。

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