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貧乏シズル

自分がお金を人に借りる羽目になった過去を思い返してみる。会社経営がうまくいかなかった2年前の話だ。一回は元夫に貸してと頼み、もう一回は元彼に貸してと頼んでみたものの借りなかった。私の場合はプライドがエベレスト級に高いので、お金を借してとお願いするか切腹するか天秤にかけるくらい恥ずかしい出来事だったと記憶している。

こうなる時に私はどんな身なりをしていたかというと、小綺麗な格好をしていたはずである。化粧もきちんとしている。ご飯も普通に食べている。だが現金がなかった。美容院代を節約するために自分で髪を切っていた。自分の服や子どもの靴は新調できなかった。友人に食事に誘われて「スケジュールが合わなくて」と断っていたが、本当は会費が払えなかった。

つまり。切腹寸前で身近な人に借金の依頼をする人の身なりは、小綺麗なのだ。

何が言いたいかというと、もし「困っている」と誰かから相談された時に、身なりが小綺麗だからと言って嘘だと判断しないでほしい。追い詰められている時ほど、今際のプライドで小綺麗な格好をしている。ご飯も食べているし、ちょっとしたカフェで心の潤いを求めている時もある。こうして精神状態をギリギリ平常運転レベルに保っているのだ。

「今日一日、何も食べていません」とやつれた顔をしているとか。「もう一年も服が買えなくて」と言ってほつれた服を着ているとか。そんなに分かりやすく「貧乏シズル」を出しまくっている人はいないように思う。

それよりも、ぱっと見は普通っぽいけれど実は困窮しているというパターンが多いのではないか。今どきはプチプライスの洋服や食べ物が出回っているので、金銭的にギリギリでも食うにも着るにも困らない。困窮しても、見た目は普通レベルに持っていける。

ギリギリに追い詰められて、やっとの思いで誰かにお金の相談をした人が「あなたは先週カフェに行ってたから、本当はお金あるでしょ」と断られる場面があるのかなと思ったら切なくなった。という話。

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