駅前で ニコニコしながら 竹を吹く。
某都内駅前にて。
辻立ちしている目の前を、とてつもなく沢山の人々が行ったり来たりしている。
冬の昼下がり。
気温は低いが、暖かな日差しがさしている。
ベビーカーの赤ちゃんに祈る。健康でありますように。
そのお母さんに祈る。赤ちゃんと幸せでありますように。
まん丸の目をして見つめて来る子らに祈る。元気に大きくなれますように。
改札に走る人に祈る。電車に間に合いますように。
ゆっくり歩く老人に祈る。平穏な一日でありますように。
杖をついている人に祈る。無事に目的地につきますように。
若者に祈る。楽しいことがありますように。
祈るって、楽しい。
と、気がついてニコニコしながら尺八を吹いていた。
昔、虚無僧は家々の門前で、その家の仏壇に向かって吹いたという。
今は仏壇のある家も殆どない。
通り過ぎ行く人々の奥底にある「仏心」に向かって吹く。
虚無僧の良いところは、普通の托鉢僧のように視界に入るだけでは無く、音でもキャッチしてもらえることでしょうか。
一時間もすると、足下が凍りついてきた。
こんな寒い冬は、虚無僧はどうしてたんだろうといつも思う。
流石にずっとニコニコはしていられない…。
以前、通りすがりの男性に「何を考えながら吹いてますか?」と聞かれた事がある。何も思いつかないので「何も考えていません」と答えたら、「やっぱり」と彼は言って去って行きました。この日は、祈るって楽しいもんなんだと気がついたわけですが、毎日、本尊の前で祈っている僧侶たちは、こんな楽しいんだ。
と、僧侶のお仕事をされている人を羨ましく思いました。
現実はこんなもんじゃないのでしょうけど。
先日、またとある駅前で虚無僧をしていたら、真横から何やら同じフレーズを話している声がする。
よく見かける募金活動だ。
看板を二つ立てて、大体ひとりでやっている。
聞いていると、おおよそ30秒くらいにまとめられたフレーズを、永遠に繰り返している。声の良い若い男性。芝居でもやったらこの声はきっと良いだろうな、なんて舞台裏仕事をしていたのでついつい「役者やればいいのに」目線で人を見てしまう。
フレーズが終わる度に深々と頭を下げている。
う〜ん、お互い邪魔してなければいいけど。
けっこう大きな声なのでこちらも集中力がブレて来る。
そうね、相乗効果で、彼のフレーズに合わせて、募金したくなるような感じで吹いてみよう。
なんて思いながらこっちも気を取り直して吹き出した。
ま、結局古典の曲か、なんちゃって追分風しか吹けないのでいつもと同じですが。
中々どちらも人は立ち止まりませんねぇ。
でも、チラリと見やったらサッと募金して通り過ぎていく女性がいた。
慣れた感じなのでいつも募金しているのでしょうか。
こちらも、仏教心のあるようなお方が気がついて下さった。
相乗効果があったかどうか分かりませんが、募金が集まりますように🙏
そして、虚無僧仲間が増えますように、
と、いつも祈っております。合掌
古典本曲普及の為に、日々尺八史探究と地道な虚無僧活動をしております。サポートしていただけたら嬉しいです🙇