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〜分岐点〜

人生において"ターニングポイント"というものは存在すると思う。人との出会いや別れ、心が動かされるような出来事、環境の変化、何気ない一言、感動する本や映像など。気づけるか気づけないかは人それぞれだが、誰もが"その瞬間"はあると思っている。

柔道整復師、アスレティックトレーナーになり約9年。思い返すと偶然なのか必然なのか分からないが、このために出会ったのかもしれないという瞬間が何度かある。その時は感じれなくても振り返るとそう確信する場面がある。

MTR Method Lab™️に入社してから、そんな思いにさせてくれた選手に出会った。

「立川廉選手」

FC東京ユース出身。東京農業大学卒の選手だ。(MTR Method Lab™️では大学生のサポートも行っている。)

出会いは彼が大学4年の10月にサポート選手希望のDMをしてくれたのがきっかけである。

多くの大学選手がプロになるために身体を見直したいと連絡が来ることが多いが、彼のDMの内容は明らかに他の大学生と比べて"異質"だった。

これまでの怪我の既往歴、トレーニングやリハビリ内容、身体の変化や感覚など長文で細かく丁寧に文章化されていた。特に目を引いたのは、今の身体が"自分の身体じゃない感覚"があるということ。プレーヤーとして復帰してその後は"指導者になりたい"という夢が書いてあったことだ。

彼自身、怪我を重ねてきた分、なぜ怪我をしてしまうのか、どうすればパフォーマンスが上がるのかをより究明したい。指導者になるにつれてここは明確にしたい分野です。と自分なりの答えを探していた。

彼が初めてMTR Method Lab™️に来た時、明るく丁寧な挨拶で良い意味で大学生ぽくない印象を受けた。

「東京農業大学の立川です。よろしくお願いします!」

彼が過去に負った怪我は「前十字靱帯断裂」という膝の大怪我だ。復帰までには早くて8ヶ月、コンディションを含めると1年以上かかるケースもある。中学3年時に初めての受傷から1度だけではなく、右膝2回、左膝1回の計3回受傷していた。大学1年での再断裂から復帰までには2年3ヶ月のリハビリ期間を過ごしていた。

Jr.ユース時代 綺麗な腕の使い方をしている

〜2023年10月初回チューニング〜

身体を初めて見ていく段階で、筋の緊張と筋線維の捻れのような硬さが目立っていた。特に股関節屈筋群など大きい血管が集中している場所に蓄積していた。血流が滞り、感覚が低下しているような感触があった。

「これは日常生活でも大変だろうな…」素直にそう思ってしまった。本人も坂道などで膝裏の痛みや違和感が出ることが多かった。

初回のチューニングから立川選手は隔週でMTRに通っていただいた。
11月には膝裏にあった違和感は減少し日常生活では気にならないくらいになっていた。股関節屈筋群の筋線維の乱れも減少しセルフケアを継続していることがすぐに分かった。

しかし改善していく段階で1つの壁にぶつかった。

「左脚だけ重心位置が数センチ外にズレている感触があります。」

立川選手は私が思っている以上に身体感覚の良い選手であった。毎回のチューニングレポートの返信やジョギングでの感想など身体の感覚に対する言語化が非常に分かりやすかった。この言語化能力に何度も助けられた。"彼の中に確実に答えがある"これを共感できるようにしていくことが最も重要なポイントであった。

外側重心に対して股関節前面よりも外側面を中心にチューニングしてくことに変えていった。中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋の癒着が強く、腸骨の後傾動作の制限になっていると示唆された。外側をチューニングすると膝裏まで響く感じがあった。ACL断裂のリハビリで股関節の外転、外旋のメニューによって中心軸が外側に流れてしまった代償も考えられる。チューニング後の"リアクティベーション"では片脚立位の感触がこれまでで1番良く感じた。
12月になると感覚的にもここの癒着が取れ症状が少しずつ改善していった。


「外側にズレる」という問題点を修正する軌道に乗せられた要因がもう1つある。

續池CEOがXに投稿している「TOE-GA:トーガ」だ。


「母趾が使え脛骨に乗る感じ、外側にズレることなく内転筋に良いスイッチが入ります。実践し感覚的に"これだ"と思いました。」

感覚の優れた立川選手は11、12月もチューニングとリアクティベーション継続してくれた。毎回、身体の感覚と動作のフィードバックをしてくれるのが私自身すごく勉強になり、かなり嬉しかった。


〜転機となった2024年〜

年明けのチューニング前に彼から身体の変化に関するレポートが送られてきた。

「TOE-GAを始め、それ以降の身体の変化が著しいのでまとめてみました!施術前に見ていただけると幸いです。筋肉痛が出ているのはどれもサッカー(ボール回し、対人、シュート、スプリント)を入れた次の日に出ています。筋肉痛の出る場所が次々と変化しています。日を追うごとに動きのキレやパフォーマンスが上がっている印象です。」

実際のチューニングでも外側に塊のような感触は少なくなっていた。ハムストリングスの内側や臀筋が発達してきている。より重心位置が仙腸関節や脊椎などの中心の骨格軸に変化してきていた。

年明け明けから確実に変化のスピードが上がっていった。身体と向き合う時間と意識が同年代の選手よりも多いのが改善の基盤になっていた。

良い感覚を得るのが早く、かつ的確なので元々骨格を基準に身体操作を行っていた可能性を感じた。感覚を養う、育てるよりも「本来の動き」を取り戻しているイメージであった。

今になって思い返すとジュニア年代やジュニアユース時代は骨格を基準に身体を扱っている選手だったんだと「本来の動き」に戻っていく彼の體に触れて感じる。

立位姿勢の変化


2月になり、立川選手からチューニング前にコンディションレポートの提出が定番化されていった。
「思い返すとこれまでの怪我や術後の変化などを客観的に見れていなかったです。変化の経歴が把握できているかでモチベーションもトレーニングの質も変わります。」
誰かに言われた事ではなく、彼が自発的に記録していったものだ。

毎日のコンディションを数値化と文章化

どうしても選手の感覚を共有することは難しさがある。ただ答えは選手やお客様が持っている。これをどれだけ感じ取れるかを常に大切にしている。何気ない一言、生活背景、日々の癖、身体に対する考え方、何か見落としていないか注意している。

立川選手が送っていただいたレポートによってチューニングの目的を共有していけること、変化を文章化してもらえたことは非常に私の中で大きな助けになっていた。実際に彼からのフィードバックで疑問や新しい視点に結びつき、多くの選手との架け橋となってくれた。

この言語化されたレポートに触れられたことが、施術家として私にとっての大きな"分岐点"になっている。

3月立川選手は東京都2部の試合に90分出場した。

「久しぶりに90分のゲームに参加しました。まだまだコンディションを上げていきます。」

フットサルの練習や大学の後輩達との練習で強度を上げていたが90分のゲームに無事に出場出来たことが何よりも嬉しかった。

ただ彼の中のゴールはまだまだこんな所では無かった。

「今コンディションは60%位です。完全に自分の"體"に戻ることができるまでやり続けます。たぶんその瞬間から指導者への道に進むんだと思います。」

私の方が勝手に天井を作っていた。彼のエネルギーはどこから湧いてくるのだろうか?本当に凄いなといつも感心してしまう。いつのまにか刺激を与えてくれる尊敬する存在になっていた。

『彼の人間性が溢れた大学引退ブログ』


〜挑戦〜

2024年4月立川選手から今後の進路の話をしてもらった。

「7月にドイツに行こうと思っています。そこでプレーヤーとしても挑戦して、後々は指導者の勉強もドイツでしたいと思っています。」

「ヨーロッパに行きたいというのは前からありました。年明けの1月に大きく変化してから渡欧できる自信がついたのが大きいです!」

自分の"體"と向き合い続けた日々が、彼の自信となり変化した瞬間だった。

多くの困難を乗り越えてきた彼は選手の気持ちに寄り添える指導者になれると信じています。
そして本来の動きを取り戻してプレーヤーとしてもやり切って欲しいと心から思います。

あと少し7月まで時間がある。彼の目標へのサポートをしていければと思います。

MTR Method Lab™️との出会いが彼にとっての良い"分岐点"になっていれば幸いです。

立川選手が指導者になった時、何かまた力になれるように私も頑張ります。

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