オリジナル小説 ふたりぼっち#3
2:慣れない日々、慣れる日々バイトを終えて家に帰ると、灰村が窓辺に腰掛けていました。白いカーテンが風に揺れて、灰村の顔に影を落とします。
背中まで伸びた灰色の髪が、静かに揺れました。
「おかえり」
後光に照らされた灰村は、この世のものとは思えぬ、神々しさに溢れていました。同時に、今すぐに消えてしまいそうな危うさも見せていました。
伊織は落涙している自分に気づきました。このひとが消えてしまったら自分はどうなるのだろう。生きていけるだろうか。それは、仄暗い、憂鬱でした。
「あなたが」伊織は口を開きました。「消えてしまったら、私も一緒に消えてしまいたい」。
ふわり、と灰村が伊織の頭を撫でました。それが、灰村から伊織への答えでした。
灰村の眼前で、緋色の和傘が無数にくるくると回っていました。それは灰村に何かを伝えようとしているのか、ただ単に回っているだけなのか、はっきりとしませんでした。
雨が地を穿つとき、二人はレンタル店に行きました。灰村が一枚のDVDを手にしました。それは孤独な画家の、ドキュメンタリー映画でした。
さっそくレンタルしてきた二人は、ラグの上にならんで座り、再生ボタンを押しました。現実と非現実が交錯していくその映画は、二人のお気に入り作品になりました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます! より良い記事を書いていきたいです。