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クララとお日さま

早くも九月、吹く風もどこか秋めいて参りました。
今日は、図書館で偶然出会った一冊、カズオ・イシグロ「クララとお日さま」について、おはなしします。

カズオ・イシグロはノーベル文学賞受賞者であり、偉大過ぎて、どこか敬遠していました。
「わたしを離さないで」も何度か手に取ったのですが、冒頭のいじめ描写に耐え切れず、挫折。
それから時を重ね、現在。先ほど述べたように、図書館で偶然にも「クララとお日さま」に出会ったのです。
表紙がカラフルで可愛かったので、手に取り。つまらなかったらすぐに返却しよう、ぐらいの気持ちで読み始めました。
しかし、いざ読み始めると、人工知能搭載ロボットのクララが、とても愛情深い性格だということが分かり始めました。
お日さま(太陽)のことをとても信頼しており、信心深い。礼儀もわきまえていて、他者にも親切。冷静で利巧。

なお、浅黒い肌をしたショートカットの少女だと劇中では語られていましたが、私は単行本表紙に描かれた女の子をイメージしながら読みました。

クララの眼差しがとにかく優しい。慈愛に満ちてる。
購入先の家庭の娘、ジョジーは病を抱えながらも「子供らしく」懸命に生きている。
幼馴染のリックも基本的に物分かりの良い子。
家政婦のメラニアさんからは、どこかつっけんどんな印象を受けましたが、悪い人ではない。
そう、基本的に嫌な登場人物が出てこないんです、この作品。

物語の終盤でジョジーが助かるのかどうか、クララは液を抜いたが無事なのか、とてもハラハラしました。
クララの想いが届き、ジョジーが助かって一安心。
しかし、ジョジーとリックはそれぞれの道を歩み始め、離れていく――。
クララは「廃棄」されたとの見解でよろしいでしょうか。
ちょっと泣きそうになりました。

そう、今まで読んでなかったのがもったいないほど、感動した作品でした。
ネタばれしちゃいましたが、愛情深い作品が好きな人は、きっと得るものがあると思います。

余談ですが、本作を読んでいる最中、ビリーアイリッシュの「What Was I Made For?」という曲が頭の中でずっと流れていました。
こちらは実写映画「バービー」(こちらもおすすめ映画)、のために作られた楽曲だそうですが、一聴の価値があると私は感じました。

それでは、Happy Reading!!

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