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【詩】春の疼き

風がぬくみ、大地がぬるみ
野山は、兆しをたたえている
森も林も、田んぼも畑も
静かな野望に、溢れている

冷たい冬に閉じ込められた
土に宿る命のしぶきが
無言の呪縛を解き放たれて
におい立ち、震えている

土手が若葉に染まっている
気まぐれに摘まんだ指に
忘れていた、刺激がはしる
幼い日、風にそよいだ草の葉を
無防備に握り、血を滲ませた
同じ指の、同じ痛みだ

春の野は、痛みに疼いている
思い思いに、伸ばした指で
生きる手触りを確かめながら

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。