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【詩】 空のかぼちゃ

裏庭の 柿の木に
かぼちゃの実が なっている
いくつも 大きな顔で
ぶらりぶらりと 吊られている

こっそりのばした 縄のはしごで
節くれだった 背中をのぼり
ちゃっかり おぶわれて
ここが居場所と 決め込んで

空に浮かぶ くろい影
畑を抜けでた はぐれ弾
きわどく繋いだ 蔓にすがる
約束のない みなし児だ

しがみつかれた 柿の木は
あり得ない 重みに動ずるもなく
採りのこされた あかい実の
あまく熟した ほとぼりを
ひっそり かざしている

場ちがいな 同居の宇宙
突きぬけてゆく 太陽の風
梢に抱えた 内海を
重力も 浮力も欺いて
あてなく泳ぐ 秋のそら船

柿の木は
なすがまま 黙ったまま
乾くまぶたを 陽にさらし
新芽のうずきに 瞳をとじて
霜の洗礼を 待っている

©2024  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。