【詩】野焼き
遠い田の、畦を焼く煙のにおいが
たなびいて、かすかに鼻を突いている
枯れ色の、風にのってやってくる
土手の傾斜は、濃い墨色に焼け焦げて
かわいた畔りを、固く引き締め
つきまとう眠気を、醒まそうとしている
炎のしぶきが、表土を溶かし
凍てつく大地に閉じ込めていた
芽吹きの呼吸を、解き放つ
蠢きはじめた、土壌の穢れを燻り出す
田畑は口を閉じ、覚悟を湛えている
嵐に耐え日照りに喘ぐ、苦闘の季節を
実りを待つ、なす術のない不安な日々を
田雲雀が、畦の余熱に休んでいる
焼けあとに、こぼされた落穂の
香ばしい、焦げの光りに包まれて
©2023 Hiroshi Kasumi
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。