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【詩】駅、影絵

慌ただしいプラットホームを覆う
コンコースのばかでかい吹き抜けに
ぽかりぽかりと浮いている
いくつもの光の放射を浴びて
無数の影絵が
ひしめき合って歩いていく
無遠慮なスピーカーが
頭ごなしに声を降らせる
乱反射する無表情な響きに
誰も耳を貸そうとはしない

出発を告げるメロディ
接近を知らせるチャイム
迫る気配にせかされて
雑踏の息づかいが先を急ぐ
無言の足踏みが列をなす

交錯する色あせた迷路の
透きとおる鏡の虚像のむこうに
座り込んで、とどまろうとする
不協和音のざわめき
立ちどまらない空間の
波間を押しのけてゆく
自分だけをみつめる旅人たち

ばかでかい幻のような真空に
息苦しさがよどんでいる
ぽかりぽかりと浮かんでいる
影絵のゆくえを知ることもなく
そっと、のみ込まれた


©2022 Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。