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【詩】海と空のはざ間で

横たわる水平線に
一匹の黒ネコが浮かんでいる
縁どりの真一文字にうずくまり
解き放つ光を見すえている

海に投げるまなざしは
とおい異国を見るという
本当に地球がまるいのならば
みつめているのは 自分の背中だ

黒ネコは 身を起こし
頭をもたげて 歩きだす
湾曲の むこうにみつめているのは
行き先もなく つきぬけていく
なにもない奥行きだ

海原は 無数の青をかさねて
揺すられる 波のひだが
風にながされ 日にさらされて
とめどなく とりとめなく

潮のしぐさは まぼろしだ
色も 形も 眩しさも
跳ね返された しぶきに過ぎず
水面の空を確かめようと
よどみの泡に 手をのばし
渦の迷路を ただよいつづける
虚しく 答えをさがしながら

沖を漂うまなざしは
遠のく ネコの尻尾を追って
見果てぬ夢を 背に馳せる
波間をただよい 波に揉まれ
いずれ 奈落に落ちるというのに

黒ネコは 黄色い瞳で
虹色の 光のすき間に吹きすさぶ
風のゆくえを 見届けている
黙りこむ うねりの むこう側に
待ちかまえる 暗闇を

©2024  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。