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【詩】光芒

空を、雲がおおっている
分厚い陰のむこう側に
確かな眩しさが、手を伸べて
襞と塊の重なる隙間を、かき分ける
熱い放射が、こぼれたかと思うと
無数の矢となって降りそそぐ
鎮まる空気を、四方につらぬいて
鈍色に光る大地を、耀やかす

あぁ太陽よ、
わたしのこころを照らしておくれ
生き抜くちからを与えておくれ

明々と、強烈な瞬きを
容赦なく、まっすぐ、浴びせて
いちめんの雲の連なりにたちこめる
憂いの呪縛を解き放つ

砕け散る巽の風
ほとばしる衝動の汗
煩悩は讃美の前にひざまづく
身もだえし、沈黙の殻を脱ぎ捨て
始祖の記憶を呼び覚ます
命、それは、途方もない奇跡の仕業だ
無限の宇宙の小さな時空に
気がつけば生まれ、よろこび、
傷つき、衰ろえ、いずれ失われる
生きる所以を知る術もなく

遥かに滾る紅蓮の炎よ、
わたしのいのちを照らしておくれ
錆びつく血肉を燃やしておくれ
飛び立つ勇気を与えておくれ

眩い光の向こう側に
垣間見る、突きぬけてゆく大空の
静かな響きに、目を見張る
圧倒的な青さに湛えた
遥かな、まなざしを追いかける

何故、此処で、此の日を生きるのだろう
受けとめきれない、熱気のしぶきが
両の肋を、すり抜けてゆく

天地をつらぬく光芒よ、
わたしのゆくえを照らしておくれ
かがやく隙間を与えておくれ


©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。