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【詩】春待ち

真昼の田は 乾いている
涸れ果て 色褪せて かえってゆく
枯れた命の ともし火を
渇いた 喉もとに かかえて

刈れた 実りの跡かたを
風が 吹きぬけていく
においも いろどりも 忘れて
かたい傷あとを 舐めていくだけ

一面を 照らすひざし
熱くたぎらす 裾をたたんで
群れるカラスの そらの影にも
黙ったまま 身を横たえて

かなしみも よろこびも
遣りようもなく 口をとざして
喉の癒しを 待ち侘びている
土手の 茂みのひなたは
もう 密やかに疼いている

©2024  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。