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思ってたんとちがう妊娠 〜 最後の砦編 〜

1日の大半をトイレで過ごすようになり、かれこれ7年の付き合いである夫にも今までに見せたことがないようなみっともない姿をさらすこととなった。

ふたりの子どもなのに負担のバイアスおかしくない?と思う。でもこればっかりは、男と女を創造された神の仕業なのでどうしようもない。

どうしようもなく男に生まれ結婚した相手がひどい妊娠悪阻になった夫。夫こそが、私が妊娠を続けるための最後の砦だった。

毛布

妊娠検査をするまでもなく嘔気で妊娠を確信したのは秋の終わりのことだった。
いきなりクライマックスかとも思われるハードなつわりが始まり、吐き慣れないうちはトイレに駆け込んでから30分以上もゲーゲーやっていた。

夫と一緒におやすみと横になるも吐き気で眠れず、深夜にトイレに駆け込む。
夫を起こさないように静かに抜け出しても必ず夫も目を覚ます。

毛布を運びトイレでうずくまる私にかぶせ、
手の届くところに水を置き、
暖房のスイッチを入れ、
静かに布団に戻り私が落ち着くのを待つ。

吐き終わっても横になるのが辛いので、ソファで息を整えていると
また毛布をかかえてソファに運びかぶせてくれる。
布団に戻ると軽く触れて「しんどいな」と共感の言葉をかけてくれる。

水炊き

毎日、夫の仕事が終わる頃に「OS-1がほしい、食べやすそうなパンとスープがほしい」等々買い物をリクエストしていた。

よく聞くマックのポテトとか、こんにゃくゼリーとか、柑橘系ドリンクみたいな「つわりでも食べられたシリーズ」がひとつも当てはまらず、何が食べられるのか自分でもわからなかった。

夫は嫌がりもせず買い物をしてくれるが、「いけるかも」と頼んだものでも食べられないことが多かった。
そして、一度でも吐いてしまうとトラウマになり、それ以降もうその食べ物は食べられない。
そうして余ってゆく食材を夫は淡々と消費した。

また、ありとあらゆる匂いがダメになり、少しでも嗅ぐとトイレに直行になるとわかると
夫は真冬にもかかわらず、換気扇の真下で水炊きだけを食べ続けてくれた。
もちろん文句は一言もいわない。

毎日

起きる。
洗濯機を回す、天気予報を確認し干す。
自分で朝食を済ます。
洗い物をする。
おにぎりを作り出勤。
ゴミ出しも忘れない。
買い物を済ませ帰宅。
私が出した洗い物も片付ける。
匂いに気を遣いつつ自分で夕食を作り済ます。
洗濯物をたたむ、しまう。
猫のごはん、トイレ、遊び。
布団を敷く。
入浴できない私に温タオルを渡す。
掃除。
ゲロゲロのみっともない私を気遣う。
「元気になって早くデートしたいね」
「暇やろうからネットフリックスとか登録していいで」
「毎日赤ちゃん守ってくれてありがとう」
「支えるから、できることするから、頑張ろう」
「かすみはお腹で赤ちゃん育てとるだけで十分」

こんなに優秀な夫の子を授かった私。
見た目はか弱くてひょろひょろの夫だけど、最強のパートナーだった。

▼一難去らぬ間にまた一難


読んでいただけただけで万々歳です。