イメージの百人一首21「今来むと―」
※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージをお伝えするに当たって、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解していただけるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。
【第21首】
今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
《いまこんと いいしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな》
晩秋の夜、あなたは恋人を待っています。「すぐに行くから」と言われたあなたはそれを信じて、恋人に会えることを楽しみにしています。なかなか来てくれない恋人に、あなたはじりじりとした気持ちになります。
それでも、秋の夜長、今来てもまだまだ会っていられる時間はあるからと、自分を慰めているうちに、とうとう夜が明けてしまいました。
空には、有明の月がかかっています。白々と夜が明けたにも関わらず残っている月に、あなたは、恋人に裏切られて一人取り残された自分自身の姿を重ね合わせます。
素性法師《そせいほうし》
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