イメージの百人一首5「奥山に―」
※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。
【第5首】
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
《おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき》
あなたは人里から離れた奥深い山の中にいます。季節は秋。はらはらと落ち始めた葉が地に重なっています。これから冬に向かうこの季節に、あなたは万物の生命が衰え行くことを感じます。それは、あなた自身も例外ではありません。
人生が有限であることを想い、しみじみとしているあなたの耳に、牡鹿が鳴く声が聞こえます。牝鹿を求めて鳴いているのです。その寂しげな声を聞いていると、あなたはいっそう秋の悲しさを感じます。
猿丸大夫《さるまるだゆう》
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