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イメージの百人一首1「秋の田の―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第1首】
秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ 我が衣手は 露にぬれつつ
《あきのたの かりおのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ》

【イメージ】
 あなたの目の前に刈り入れ時の田んぼが見えます。どの田の稲穂も黄金色に輝いていて、重たげに頭を垂れています。あなたはこの国で一番の権力者として、それを満足に思いながらも、これから刈り入れに向かわなければならない百姓の苦労を思います。あなたは、その苦労を減じることはできません。しかし、せめては、彼らと苦労を共にしようと思っています。

 夜になって、あなたは、刈り入れのために作られた仮の小屋に泊まります。いつもは宮殿で何不自由ない暮らしをしているあなたは、粗末な小屋に泊まって、しみじみと下々の者たちの苦労を思い描きます。

 寒々とした小屋の中で眠りにつくと、風の音であなたは目を覚まします。寂しげな音です。ふと気がつくと、あなたの衣服の袖が濡れているようです。粗末な小屋は屋根の作りが荒いので、そこから夜露が入り、袖を濡らしたのです。夜露に濡れた経験など無いあなたは、また下々の者の労苦を思いやるのです。

 天智天皇《てんじてんのう》

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