第3首 人を招く草

※このノートでは、秋の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。和歌によっては、【ちょこっと背景解説】というパートがあるものもあり、そこでは、鑑賞する際に知っておくと、より深く和歌を味わうことができる知識をお知らせしています。

秋の野の 草のたもとか 花すすき 穂に出でてまねく 袖と見ゆらむ
《あきののの くさのたもとか はなすすき ほにいでてまねく そでとみゆらん》
(古今和歌集/在原棟梁《ありわらのむねはり》)

【イメージ】
 秋の野を服に例えれば、お前は、たもとに当たるのだろうか。
 花すすきよ。
 お前の穂が風に揺れている。
 たもとに当たるから、その様子が人を招く袖のように見えるのだろう。

【ちょこっと古語解説】
○たもと……手《た》の本《もと》の意から、袖、また袖の垂れ下がった部分のこと。
○花すすき……穂の出たすすき。風になびく様子を、人を招くさまに見立てることが多い。
○らむ《らん》……現在の推量を表す助動詞。「~しているだろう」ほどの訳。現在推量は、現在の「目前に無い」状況を推量するものだが、この和歌は、目前の状況を詠んだ(目前にあるものとして詠んだ)ものである。このような場合、「らむ」は、目前の状況の原因を推量する意味となる。

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