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光のとこにいてね

その人にとっての光とは何か、それを考えさせられた。感動した。
ネタバレを含むのでご了承ください。

「光のとこにいてね」この言葉の意味が時を経て変化していく。小2の頃はただ場所を、約束を指す言葉だった。高1では追いかけないで、問わないでという別れのニュアンス。最後には自分の行動が貴方に影をかけてしまう。だから私とは違うところにいて、と相手の幸せを願った言葉だった。そして最後には2人の光をみつける。

2人の幼少の出会いから大人になるまでをお互いの視点や感性から描いていくこの物語。
幼い頃だから見える新鮮な視点やまだ理解できない事柄、それらが大人になってから意味を持ち、影を持たせたり輝かせたりする。

果遠ちゃんにとって、下で手を伸ばして受け止めようとしてくれた結珠ちゃんは光そのもので。結珠ちゃんにとって真っ直ぐで周りを気にしない果遠ちゃんは光そのものだった。
制限の多い家庭で育ったお互いは、お互いにないものを持ち合っていて惹かれあった。
お互いがお互いにとっての「光のとこ」だった。

果遠ちゃんは自分を影だと思っていた。育ちが悪くて、他人に頓着がなく、結珠ちゃんとは反対側の人間だと。そう思い込み、結珠ちゃんは大切な人を手放したこと、裏切ったことへの罪悪感を感じると思っていた。捨てるのは常に弱い側だ。自分とは一緒にいられない、そう思っていたのだ。

しかし、結珠ちゃんにとっては果遠ちゃんこそが「光」だった。大人になった結珠ちゃんは自由だった。いや、海辺での暮らしが彼女を強く変えたのかもしれない。それは果遠ちゃんがいたことによる心強さかもしれないし、母親とのやりとりによってかもしれない。

一緒にいたいと願い続けてきた2人が紆余曲折を経てようやく結ばれる。私が人生で読んできた本の中で一番と言っても過言では無いほど良い作品でした。ぜひまだ読んでいない方は読んでみていただきたい。。

「すみません、大丈夫です。」
私は立ち上がり、手の甲でぐいっと鼻の下を拭った

この最後の部分が最高でした。2人の出会いの立場が逆転?したみたいな、結珠ちゃんのこれまでの行動にはなかった一面が、2人が重なったような描写がたまらなかったです。

「海が光っていた。波も光っていた。空も光っていた。結珠ちゃんの車のボンネットもフロントガラスも、全てが光の中にいた。」

あの2人の光はここにあった。ずっとここに。
ようやく、強く、自由になれた2人が結ばれる。本当の光を見つけられた物語だった。

自分にとっての光のところってどこなんでしょうね。


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