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「礼儀作法を科学する」何故、最近の意識高い系女性は手を重ねるのか

「礼儀作法を科学する」礼儀作法・マナー講師の葛西美雪です。

随分前からよく見る「手を重ねる」姿勢について、
礼儀作法師範の立場より記します。


立つときやお辞儀をするとき、
手を身体の前で重ねましょうと教えられたことはありませんか?
また、そのような姿勢をお伝えしているマナー講師の方を見かけませんか?

現代のマナーの指導でよく見受けられますが、
これは本来の日本の姿勢ではありません。

(注:マナーや作法は時代によって変化していくもので、
「絶対間違い」とも言い切れません。
日本人のほとんどがしていたら、
それが一般的なマナーになるともいえるでしょう。)

しかし、日本本来の姿勢を理解せぬまま
「そのほうが何となくきれいに見えるから」と
受け入れてしまうのはいかがでしょうか。

今日は「手を重ねる姿勢」について真面目に試論します。

1.昨今見られる「手を重ねる姿勢」について(実際にどのような姿勢か見てみよう)

美しいおみ足と揃った手の位置
世界最大ミスコン「ミス・ワールド」2022日本大会ファイナリスト。美しくて眩しいです。

この手を重ねる姿勢の特徴は
①肘がウエストのラインを維持している
②手がおへその辺りにある
③指がきれいに揃っている
が挙げられます。
加えて、脚に関しては、左右をあえてずらし、
ラインを美しく見せようとしているのも特徴です。

いつの頃からか、この姿勢が
「女性の美しい姿勢」として大流行しています。

私の周囲の礼儀作法の流派や伝統芸能に携わる方々は
こちらの姿勢を「コンパニオン立ち」と呼称し
「自分の美しさを主張するさいの立ち方でいらっしゃる」と、
静かに見守っております。

【Point】コンパニオン立ちが蔓延している

2.マナー講師から教えられたというけれど

現在に至っても、この姿勢を多く推奨する企業、
マナー講師は後を絶ちません。

立っている姿勢だけではなく、
座っている姿勢、お辞儀までも
「前で手を重ねるものです」と言い切ります。

それらのマナー講師の出身は
「エアライン系」「ミスコン系」とあり
ふるまい全般が「接遇の姿勢」「美しさの見せ方」を
目的としているのです。

「日本の正式な姿勢」にそのような考え方はありません。

【Point】「相手を慮る姿勢」と「自分を美しく見せる」姿勢は全く違う

3.姿勢の変遷を確認しよう(近世~平成の女性の姿勢より)

では、日本の姿勢とはどんなものだったか確認すると
小学校で教えられる姿勢(手は腿の横に自然に下ろす)
が男女とも一般的でした。

これは身体の構造的にも自然であり
多くの文献・伝統芸能を概観しても、一目瞭然です。

では、手を組む姿勢はなかったのか、というと
そんなことはありません。

普段の私達も
手を組んだり、重ねたりすると落ち着きますよね。

正式には手は腿の横に下ろす。
略式として、少々リラックスしている時に手を重ねたのです。

つまり、リラックスしていると周囲に表す姿勢だったので
立場の高い方の姿勢である、と結論付けられます。

近世~近代の日本の華族やお姫様たちの
肖像画・写真を確認すると、
正式には手を横に下ろしていたり
扇を持っていたりしますが、
手を重ねる姿勢が「リラックスしているポーズ」として
おさめられていることも確認できます。

津軽伯爵家御令嬢

そして、1950年後半からテレビが全国的に普及されます。
テレビに映る立場の高い女性として、
皇室の方々がブラウン管に映るようになりました。

正式さ、憧れ、そして日本の象徴としてのふるまいが放送されます。
加えて、皇族の方は「周囲の方への心遣いのふるまい」は欠かせません。

・かしこまり過ぎない
・気を遣わせすぎない
・緊張なさらないでください
というお気持ちの表れとしての
「心遣いからのリラックスしている姿勢・手を重ねる姿勢」が
全国に放送されます。

すると、それを見た女性達は
手を重ねる姿勢こそ美しいと違和感なく取り入れたのです。

【Point】手を重ねるしぐさは正式でエレガントに見えた

4.人間は手の形を無意識にチェックしている(心理学研究より)

我々は初めて相手と対面したときに、どこを確認すると思いますか?

相手の顔や表情、ファッション、身体のラインなど
意識的にチェックすると思います。
これらは、相手にわざわざ言うことはありませんが、
どうしても意識してしまうものです。

しかし、これは表層心理でのこと。

犯罪心理学の文献から学んだことですが、
実は、人間は自分では意識しない深層心理のなかで
相手のを必ずチェックし、
その形によって相手の心理を探る働きをします。

(これは、とても面白い実験ができるので別記事にします)

つまり、我々は相手の手を確認したいのです。
手が見えると安心するのです。

我々の深層心理下では、手を重ねる姿勢をされることで
相手の手がチェックしやすく、その手が美しく揃っていると
安心・安全であると無意識に確認しているのです。

【Point】深層心理では、相手の手が見えると安心する。

5.手を重ねない姿勢を自然にできるほうが好印象

無意識下では、手が見えると安心であるとはいったものの、
手を重ねる姿勢は、肩が前に出て胸がすぼまります。

人間の腕は、体の横についているのですから、
自然に垂らせば体の前で手を組めるはずがないのです。

諸外国の要人でも、立つときやお辞儀をするときに
手を重ねている方はいらっしゃいません。

不自然だからです。

2014年國學院大學のポスターより「この国の心をうつす、日本人になろう。」

前述の「コンパニオン立ち」は不自然な姿勢です。
手を、美しく見せ、高い位置で組むことにより
脚を比率を長く見せようとする
日本独特の接客業の姿勢なのです。

この姿勢に、
マナーや相手を慮る心遣いは感じられません。

いかがでしょうか。
ここまで申し上げても、手を重ねますか。

身体のつくりに対して、自然に反する動きであるか否か、
他者から言われたことをそのまま受け入れるのではなく
疑問を持ち、歴史を勉強し、
日本の姿勢を伝えていかなければならないと
自戒をこめて記します。

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