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100%のその先へ

僕はKASIKAというクリエイティブの会社の代表をやっていて、僕からのメッセージとして社内のスタッフ向けにまったく世に出ない文章を書くことがよくある。

その中で「どうすれば人の心が動くのか」「どうすればまた選んでもらえるのか」という話をよく書いたりする。単純に人の心が動けば、感動すれば仕事はとどまることなく増えていく。「120%、200%相手の心を動かす」「心動させろ〜〜!」ということなのだけれど、言葉でいうのは簡単、けれどやってみるとそれがなかなかうまくいかない。

「自分では100%やったつもりなのにな〜。」「伝えたつもりなのに伝わってないな〜。」仕事においてはそういうことがよくある。

等価交換という罠

今、世の中では「等価交換」ブームらしい。等価交換という価値を紐解いてみると

等価交換とは等しい価値を有するものを相互に交換すること。

とWIKIにも書いてある。これは100円均一にいって100円支払ってモノを買う。つまりはそういうことだ。仕事でいうと、「これをやってください」という依頼に対して見積りというものをつくり、自分の労働時間を金額に変えて交換する。それが双方等しい価値だと感じたら仕事は成立し、お金が手に入る。普通に考えるとこれでいいように思う。けれど、実際には、この繰り返しだと仕事は増えていかないし、選ばれてはいかない。

例えば旅行に行って、ある温泉旅館に泊まったとする。そこの仲居さんがあれやこれやと到着したときから気遣ってくれて、一言質問したらその場所の地図をもってきてくれたり、温泉のことをいろいろ教えてくれたり、料理の準備からなにからいろいろやってくれて、話していても嫌味がなく気持ちがいい、常にかゆいところに手が届くサービスをしてくれる。本来であればそこに温泉があり、泊まる宿があってそこまでの交通費分の価値をその旅館は提供すればいいのだけれど、なんだかその人がいるだけで、得した気分になる。

ではその仲居さんは等価交換を考えていつも仕事をしているのだろうか?きっと違うと思う。その仲居さんはいつも「Give It Away」の精神で働いているはずなのだ。

Give It Awayの精神

レッチリの有名な曲に”Give it away”というのがあって「とにかく与えろ」と連呼する曲。この歌詞も、利他的行動 (altruistic behavior/自分よりも他者を優先する行動) や無私無欲 (selflessness) といったことを歌っている。

人は等価交換の外側にある価値を見出した時に「心が動く」それを引き起こすもっとも簡単なやり方が「とにかく与える」という事。簡単に言うと見返りを求めない行動。交換したいんです、ではなく、与えたくて与えたくて仕方がないという状態。

こう書くと片方で「搾取だ」「ボランティアは仕事ではない」「クリエイターに権利を」とか訳のわからないことを言いだすアンポンタンがいるのだけれど、そういうことを言いたいのではない。むしろ「タダでもいらんわい」だったりすることも多々あるし、金額を提示できない人ほど仕事のレベルが低いことなんて世の常だ。

出し惜しまない

常に等価交換の外側で仕事にとりくむ。常にもっと喜んでもらいたいという気持ちをもって仕事をする。「こんな情報言っちゃったらもったいないな」とか「これは頼まれてないから、いいと思うんだけど、ここはあえてやらないでおこう」とか「早く作りすぎると簡単にやったと思われるから、提出する時間を引き延ばそう」とか「安い金額だから(もしくはお金にならないから)安かろう悪かろうでいいか」とか自分が本来引き受けた仕事を等価交換の軸に沿って、損得勘定で取り組んでしまうと、たいていのことはうまくいかない。いや、広がらないと言ったほうがいい。

自分の例でいっても、「他に誰もやらないだろうな」「あ〜面白そう」「聞いてるだけでワクワクするな」という依頼が仮に「今はお金なくて」「タダの仕事になるかもなんだけど」と言われたとしても、そんなもの関係なく取り組んだその先に、感謝され、評判になり、人を紹介してもらったり、その先の大きな仕事につながっていったという事は数かぎりない。

仕事や人という形をしたチャンス

目先の損得ということをよく言われたりするけれど、それは本当にその通りで目の前の仕事は、たった一つのきっかけにしかすぎない。仕事という形をしたチャンスと言い換えてもいいかもしれない。メタ(視野をひろげて)でみるとたった一つの仕事からたくさんの広がる可能性の網の目が見えるはずだ。

人生で訪れるチャンスというのは、時にストレートでわかりやすいこともあるが、そのほとんどは、フォークボールだったり、カーブだったりという変化球の形をしている。どんな内容のチャンスがきてもいいように常日頃から、仕事に取り組むスタンスという準備をしておく。その時の魔法が「Give It Away」「Give&Give」という言葉。与えたものを人が受け取った時に120%、200%に感じた時にそのあふれたものを人は返したくなる。https://ja.wikipedia.org/wiki/返報性の原理

それが時に次の仕事の依頼や別の仕事の紹介だったり、人の紹介だったり、そういうものにつながっていく。それが戦略でいうと「リピート戦略」だったりに応用されて伝わっているだけなのだ。大切なのは戦略でもプロセスではなく、その手前のスタンス。もっというと心の準備。それが人柄やキャラクターになって普段から外側にあふれだしているか(表情や何気ない一言をとっても)ということが、仕事で選ばれていく、人や仕事に恵まれていく秘訣なのだ。

ただ、そうやっていても人は「新しいこと」に慣れていく生き物。当初150kmのストレートも目が慣れてくると普通に感じる。そういう慣れていくお客に対するいつまでも愛され選ばれつづけるという「つづける」秘訣はまた次の機会に。

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