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伝わる・伝わらない問題

covid19によって対面でのコミュニケーションの数がめっきり減る事で、テレカンなどの遠隔でのコミュニケーションやSNSを通じた「文字・音声」のコミュニケーションが世の中の圧倒的主流になってきました。

人は本来、対面での言葉以外の情報(表情や、かもしだす空気感)などから実に多くの情報を得ているので、それが断たれることによるコミュニケーションエラーが多くおこってきているような気がするし、それは今後ますます加速していくと思っています。

特に140文字などで制限される言葉であったり、振り返りなしの音声コンテンツなどは、実はとてもハイレベルなコミュニケーションを要求していて、言葉に長けているはずの芸能人やお笑い芸人さんが使用しても炎上を繰り返したり(意図せず)、たいして面白くないトークを繰り広げているといった場面も目にしているはずです。

それくらい通常人間は五感総動員でコミュニケーションを行なっています。会えなくなったり、制限されるとコミュニケーションが難しくなるよね、というのはそれはそれで一つの正解なのですが、エラーを引き起こすもうひとつの要因が

「インフォメーションの場面でコミュニケーションしてしまい、コミュニケーションが必要な場面でインフォメーションをしてしまう」

という事が大きな要因ではないかと最近思っています。

なんだけっきょく最後は言葉じゃないか

電通のコピーライターの伊藤公一さんの著書の中でもここにふれて

インフォメーションとは情報を相手に正確に伝えることを目的としている。コミュニケーションとは伝えた上で相手の心を動かすことを目的としている。

「言いたいことを正しく言葉にすれば、それは伝わる」というのは大いなる誤解だ。と書かれています。

SNSなどで、なぜ告知が人の心を打たないかの理由がここにあります。それはインフォメーションだからです。そもそも人はよっぽどの興味がない限り人の話なんかまともに聞いてません。その上で人の心に届けるためには、聞いてくれている相手と自分との間に重なる共通項をみいだし、そこに向けて言葉を発していくコミュニケーションが先行し、そのあとにインフォメーションが続く形で伝えるのがいい気がしています。それも割合は8:2くらい。

逆にストーリーじたてのクラウドファンディングなどで資金が集まる理由は、このからくりにあると思います。自分と相手にある特殊な共通項、そこを描くストーリーを8割くらい伝え、最後に買ってもらいたいリワードを伝える。さらに達人になると定型の締めの文章の前に、温度のある言葉をいれてコミュニケーションで締める。コ→イ→コの三段活用が今の時代の言葉の伝え方ではないかと思っています。

「どうして自分の言葉は伝わらないのだろう」

「なぜ自分は人から選ばれないのだろう」

「なぜこの商品は売れないのだろう」

「なぜ人が来てくれないのだろう」

と悩む時、それはインフォメーションとコミュニケーションのバランスが崩れているのかもしれません。

無意識の慣用句禁止

伊藤さんはよく使う慣用句「引き続きよろしくお願いします」という言葉にも触れて、こういってます。

普段何気なく使ってる言葉に一文を添えるだけで、そこに熱量が生まれる「この仕事もいよいよ佳境です。がんばっていきましょう。引き続きよろしくお願いします」「この間一緒に飲んだあの店でメールしています。引き続きよろしくお願いします」フレンドリーな距離感、人と人のやりとりをロボットではなくコミュニケーションで終わらせることが大切だ

どうですか?これを見て「うるさい人だな」と感じますか?僕はまったくそう思わないどころか、何も考えずに「引き続き」と打っていた自分をとても反省しました。そして仕事のできる人はここまで考えているのだなと背筋が伸びる思いでした。

すべてに「温度」があるコミュニケーションがうすくなった今の時代だからこそ、ひとつひとつの言葉に丁寧に、相手が目の前にいるがごとく言葉を重ねていく。もしかしたらそれでも伝わらないかもしれないな、くらいの気持ちで言葉を紡いでも全然無駄ではないと思います。

余談ですが、インフォメーション優位の人は事務系のお仕事やネットショップの運営係に向いてる気がしますし、コミュニケーション優位の人は、きっと営業職や企画をつくる人に向いているのでしょう。経営者であったりクリエイターはその両方をしっかり持つ事がこれから大切で、それができる人間がプロデューサーだったりディレクターの仕事もできるのだと思います。

団塊の世代やゆとり世代、Z世代など世代間のコミュニケーションもまた複雑に絡み合うので、一朝一夕にこれが正解だとは言えないですが、どこまでいっても基本は相手と自分の交わる部分の共通項を探していくことに間違いはなく、まずは自分のコミュニケーションをしっかり見直してみることからはじめると、これから先仕事や人に選ばれていく人間になっていくんではないかと思います。

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