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前回のこの「黎明期」からの続きとして2010年前後からコロナ前くらいまでの期間を過渡期と位置付け、書いてみようと思う。

まずは大きな時代背景を理解するためにも、概観として時の政府が掲げたセクター連携に関わる国家戦略を大雑把に振り返っていきたい。


新しい公共

2009年に発足した民主党政権は、「新しい公共」を国家戦略の柱として掲げた。

「新しい公共」とは、2009年10月の施政方針演説で鳩山首相が打ち出した最重要政策課題の1つで、演説によれば、それは「人を支えるという役割を『官』と言われる人たちだけが担うのではなく(中略)地域で関わっておられる方々一人ひとりにも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観」を指すした。

それまで行政が担ってきた教育・子育て・街づくり・防犯防災・医療福祉に民間も参加し、社会全体で推進していこうという概念で、要は「公共サービスの民主化」と私は受け止めている。

それまでの自民党政権にはない発想であり、よく読めば今思えばなんら間違ったことは言ってないと思うが、あまりにも時代を先取りしすぎたり、一部のソーシャル感度の高い界隈には熱狂を持って受け入れられたが、一般には唐突すぎたり、鼻についたりして、広い浸透には至らなかったと言える。

尚、参考までに、2010年に8回に渡る「新しい公共」円卓会議の結果、6/4に出された「新しい公共」宣言は以下で閲覧が可能だ。

https://www5.cao.go.jp/entaku/pdf/declaration-nihongo.pdf

その直後、6/8(4日後!)に菅直人内閣へ変わり、10月に円卓会議は推進会議へと形態を変えた。翌年2011年3月に東日本大震災が発生。行政の緊急度・重要度が復旧・復興へと変わる中でも協議を重ねた。その後、9月に野田佳彦内閣へと変わっても、推進会議は続き、結果2012年10月までに9回に渡って開催されたが、その2ヶ月後の12月、再度自民党政権へと戻り、会議は終了となった。

しかしこの期間議論された「NPOへの税制優遇措置」などは具体的に施行され、今も尚残っており、全く無駄ではなかったと言えよう。
https://www5.cao.go.jp/npc/pdf/kihu-panhu.pdf

地方創生

その後の大きなターニングポイントは、2014年月に出版された増田寛也著「地方消滅」がベストセラーとなり、「消滅可能性都市」に言及された事であろう。

東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げる必要性が提示され、それを契機に政府から「地方創生」というワードが2014年9月3日の第2次安倍改造内閣発足後の記者会見で発表された。尚、同日、「まち・ひと・しごと創生本部」が閣議決定され、同本部は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し実施することとなる。

この取り組みを支援するため新設された地方創生推進交付金によって様々な事業が創造された。一方、これまで多額の予算を投下してきたにも関わらず、短期視点での政策が多く、また本来の目的であった東京への一極集中に歯止めがかかっていないという課題も指摘されている。

SDGs

2015年9月25日に国連総会でSDGsは採択された、持続可能な開発のための17の国際目標であるが、これを受け2016年5月に政府は「持続可能な開発目標 (SDGs) 推進本部」を設置。同年9月には「SDGs推進円卓会議」をスタートし、12月には2030年までに国内外において SDGsを達成するための中長期的な国家戦略が示された。

個人的な意見として、世界共通の時限的なビジョンが提示されたことに意義を感じる一方、規模が大きすぎ、個別組織でのアクションのイメージがしにくかったり、出来ることや出せるインパクトには限りがある事に問題意識を持っている。

尚、マクロで見ると、期限まで残り10年を切った2022年時点のSDGs達成度ランキングによると、日本は163カ国中の19位となり、2021年の18位よりも順位が低下しているようだ。

地方創生SDGs

上記の地方創生は内閣府の取組であり、SDGsの理念が「政策の全体最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待できる」とし、「地方創生SDGs」を推進している

2018年に内閣府が事務局となって設置されたのが地方創生SDGs官民連携プラットフォームだ。これは地方自治体が、民間企業や大学などとパートナーシップを結んだり、イノベーションの加速を生み出したりするためのマッチングの場となっている。


以上、片足を令和に突っ込んだ部分もあるかもしれないが、大雑把にセクター連携に関する国家戦略についてのレビューを行った。

次回はこの大きな流れの中で、行政(主に地方公共団体)・企業・NPOがどのようにそれぞれ変化を遂げてきたかを見てみたい。【続く】

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