ファスティング 1日目


健康的な合法トリップを日々探している私は、ある時もちにその一種としてファスティングがあるらしい、と言う話をした。
(ちなみに合法トリップとは法に触れない方法で意識を覚醒させること。分かりやすいのはサウナで整う感覚)

ファスティングを簡単に説明すると、酵素ドリンクを飲みながら行う断食。ダイエット目的というよりもむしろ、デトックスだったり内臓を休めて嗅覚や味覚を改善するらしい。ただしエネルギー源であるブドウ糖の代わりにケトン体が作られ、脳のα波が出てトリップできるのは3〜5日目以降とのこと。
気になってはいたものの実際には行っていなかった私に対して、もちは「じゃあ来週から始めよう!」と提案し段取りがみるみるうちに決まった。すぐに行動に移していくのが彼女のいいところ。
私たちはビギナーなのでまずは3日間断食から。以下は私の1日目のレポート。

1日目
前日は準備食のスープで済ませ、いよいよ断食スタート。
朝ごはんの時間がないので、その分だけ寝れる。朝は買っておいた酵素入り青汁を飲む。苦い。
通勤中はわりとすっきりしているものの、歩くスピードがいつもより遅い。私は普段もゆっくり歩いているのにさらに遅いとなると、もう、どんどん抜かされる。でもサッサと歩く彼らの後ろ姿を眺めながら(人はどうしてこんなに生き急がなければならないのだろう)と思う。

会社に到着してから午前中の間、空腹に悩まされた。お腹が「何も入ってこないけどどうしたん?」と言って鳴いている。
お昼の時間は会社近くのビルの屋上で、よく晴れた空と工事の赤いクレーンを見ながらぼんやりしていた。持参のにがにが酵素ドリンクのおかげで空腹は紛れる。
最近人から借りた『夜と霧』の本の内容を思い出していた。強制収容所で働くユダヤ人。食事はほんのわずかなパンと具が全然入っていないスープのみ。確かに、空腹で肉体労働するのはさぞ辛かろう。という謎の実感をまじえた感想を持つ。実際は比じゃないのは重々承知ですが…。

午後になると空腹は割とおさまっていた。もちによると2日目の方が辛いらしい。
プラシーボだと思うけれど残業時間中”ゾーン”に入って仕事を行っていた時間があり、それは楽しかった。近くにいた課長に「さっきすごい集中してたね!」と言われ「ゾーンに入ってました」と一応報告した。

帰り道も思ったよりはお腹は空いていないはずなのに、無意識に飲食店の店先にある食べ物の写真や食事している人を目で追ってしまう。
炭酸水がいいというので帰りのスーパーでレモンスカッシュ0kcalを買ってみる。確かに気は紛れた。でもやっぱり人工甘味料の甘さは苦手かもしれない。
帰宅してもそこまで辛くはない。いつもあったはずの夕食の時間がないと何をしたらいいのかわからず手持ち無沙汰になり、部屋の掃除などをした。
でも一瞬だけなぜか、たまに訪れる理由のない虚無を感じる時があった。自分の中に大きな空洞が現れスースーと乾いた風が通り抜けていくような。でもそういう時は何もしないのだ。何もせずただじっとその時が通り過ぎるのを待つ。
手足がものすごく冷えている気がしたので、ヨガをした。
そうして2日目につづく。




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