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【ねこさん】

🐱ふっと思い出したねこさんの話をします。


小学生3、4年だったと思う。たしか台風一過の晴れた日だった。

どこからともなく家のベランダに一匹のねこさんが遊びにきたことがある。

すかさず私はダンボールでねこさんの家をつくった。寒くないようにいらなくなったタオルケットも敷いた。

祖父はそんな私をみて面白半分に「今日の飯だな」と「ねこまんま」をねこさんのご飯にと用意してくれた。

ねこまんまとは、ひらたく言えば残飯である。突然のねこさんの訪問でキャットフードを買う時間もなかったので、祖父が気を利かせてくれたのだった。

今では考えられないようなご飯だったが、ねこさんもわかっていたのだろう。ねこまんまには鼻を近づけただけでほとんど食べなかった。

そのかわりミルクはピチャピチャと飲み、私の作ったダンボールのキャットルームで文字通りまるくなって寝てしまった。


翌日は私と1日中ベランダで遊んだ。遊んでもらっていたと言ったほうが正しいかも知れない。

何を思ったのかわからないがアマリリスという曲を縦笛で演奏した。当時学校で習っていたのだろうと思う。

ねこさんはそんな私をきょとんとしたまんまるの目でみていた。とにかくずっとねこさんに遊んでもらった。

この日も相変わらず祖父はねこまんまをねこさんにあげようとしていた。ねこさんは子犬のようにくんくんするだけで食べなかった。

この日は母が買ってきたキャットフードとミルクを美味しそうに食べていた。


3日目、学校から帰ってくるとねこさんの姿がみえなくなっていた。

祖父は犬は3日いたら恩義を忘れないけど、猫は恩知らずだなと言い放った。

私にはねこまんまをねこさんが食べなかった腹いせのように聞こえた。

いつもは優しいおじいちゃんだったのにこのときばかりは嫌いになった。

私はどこいったの、どこいったの、と泣きながら暗くなるまでずっとアマリリスを吹き続けていた。


ねこさんの名前は「ぽん」

いまだに覚えているということはそれだけ縁のあったねこさんなんだろうと勝手に思っている。

これ以降、私が何かしら辛いことや苦しいことがあったとき、たいていどこからともなくねこさんがひょこっと顔をだすようになった。

もちろんあのときの「ぽん」ではない。

ただ、私のなかでねこさんは「ねこ神」さまとして私の精神安定剤になっている。

…っていうお話。

[投稿にあたりpasteltimeさんのイラストを使用させていただきました。ありがとうございます。]

20231203



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