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お前もプロジェクト・ヘイル・メアリーを読んで「しあわせ、しあわせ、しあわせ」になれ【レビュー&感想】

おっっっっっっっっっっっもしれっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

最近精神状態がよくなく、布団にくるまって「悲しい……悲しい……」と言いながらFANZAセールで買った1000ページ越えのCG集を繰り返し見ることしかできなかった俺ですが、久々に「もう何もかもの優先順位を変えて早く続きが読みたい」と寝食を忘れるレベルの本に出会ったので#読書感想文を書くことにします。

一人でも多くに読ませたい。
そして、アイツを推させたい。


【ネタバレなしレビュー】

■SFってよく分かんなかった

読む前「うちゅ……う……?」

そもそもSFって何さ。
ハリウッドの大衆向け映画が好きで明日アバターも見に行く予定だが、しかしながらSFってよく分からん。なんか分かんない単語多くて難しいし……キャラがすぐ死にそうだし……。スターウォーズも4見たけどゴメン刺さらなくて……向いてないんだろうなあ……。

――って、思ってた。

いやあ、刺さったらおもしろ。宇宙という舞台がキモなわけだけど、でも宇宙について全然分からなくても、話が面白かったらそりゃ面白いわ

SFへの苦手意識を抑えて最近見た映画がオデッセイ(火星の人)で、これが……すっげ~面白かった! 火星に一人きりで残された宇宙飛行士が、なんとかあるものでサバイバルをする話。
これは「SF苦手」を「サバイバルものが好き」を上回って鑑賞した結果……本当によかった!!!!すごかった!!知性ってすごい!!!!

ハンターハンター序盤でも強調されてるつくりだけど、謎や課題を一つ一つ解決していく気持ちよさって、普遍的なものだよね。
分子の結合がどうのこうのとかは全然分からなくても、「課題→がんばる→解決」の繰り返しですっごく面白かった!ハラハラドキドキした!泣いちゃった!

これで丁度脳みそが宇宙に慣れ、無重力空間での作業とかが想像しやすくなった状態で、偶然本書「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読み始めたので、順番としてとてもよかった。

■ネタバレなしで語るのが難しい面白さ

※以下、キンドルの商品ページのあらすじですが、1ミリも予備知識を入れたくない方はもうここでひき返してプロジェクト・ヘイル・メアリーを一刻も早く読んでください。

大ヒット映画「オデッセイ」のアンディ・ウィアー最新作。映画化決定!
未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく宇宙へ飛び立った男は、ただ一人人類を救うミッションに挑む! 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント

キンドル上巻のあらすじ

…………ん?
そう、読み終わってから知ったんだけど(予備知識ガチ0だった)、オデッセイ原作の作者かよ!!!!道理で面白いわけだよ!!!!と納得の嵐でした。

このあらすじ、それからサンプルで読める開始数ページの範囲ならさすがに言っていいよね。

ある日目覚めた主人公は満足に喋れず、体もうまく動かせない。機械音声に語りかけられ、ロボットアームに生命維持をされている。そして、自分の名前が分からない。記憶がない。
まったく知らない場所に、記憶喪失の状態でいる。日ごとに身体機能が回復して歩き回れるようになり、行ける場所も増える。最序盤は現状把握と記憶の回復に努めるパートである。

サンプルの最序盤

記憶のない主人公と一緒に、何も知らない読者も少しずつ情報を獲得していく。TRPGやゲームみたいな導入で、スッと物語の世界に入っていける。

本作上巻は基本的に「宇宙船の中に一人きり」という状況で進む。
火星の人でもあった通り、「課題→がんばる→解決」の繰り返しがさすが見事。
構成も凝ってたから、全然飽きずに進む。
同時期に他の海外作品も買って読んでたんだけど、これ……圧倒的に文が読みやすい!原文か翻訳か、あるいはその両方が優れてるんだと思う。(1959年出版の翻訳小説は、言い回しが難解でさすがに読むのが苦痛だった)
主人公が一人きりなんだけど軽快なアメリカ人で、地の文が語りかけるような口語で、それがまったく引っかからない。よかった!

厄介なのが、触れること=ネタバレな出来事があるので、「〇〇という作品が好きならオススメ」すらおおっぴらに言えないんだよね。く、くるし~。

とにかく、記憶喪失の主人公が記憶を回復させながら、一つずつ困難に向き合い解決していくのがよかった!!
さすがロジカルというか、「あれ?」と思ったことにも思わなかったことにも細かなフォローがあり、理由がある。シナリオへの不満やストレスはなかった!

とにかくお話が面白いので、SF苦手人(んちゅ)にもすごくオススメできる。仮によく分からないところがあっても、そこに栞を挟んでとりあえず進んで読んでみればいい。大事なのは細部を完璧に把握することでなく、このメチャクチャ面白いストーリーを最後まで読むことだ。そんで、読み終わった後、栞に戻ってじっくり把握すればいいのだ。

以下の「ネタバレを含むレビュー」では①上巻序盤のネタバレ、②上巻のネタバレと段階をつけて紹介し、②では「こういう作品が好きならオススメ」も言う。
本当は事前情報を入れずに面白さ100%で読んでほしい。でも、もしまだ今の時点で「手に取るまでいかない」「読んだけど序盤で脱落してしまった」となり、受け取るはずの面白さが0%になってしまったら、それは俺の望むところではない。
なので、下記のネタバレで面白さが80%に目減りしても、その80%はすっげーでっけー80なので、とにかく最後まで読んでほしいと切望する。


↓上巻序盤のネタバレ

【①上巻序盤のネタバレを含むレビュー】

■普遍的な気持ちよさ

記憶喪失の男が、なんとか現状を把握する。どうやら宇宙にいるようだ。
この宇宙船パートと交互に描写されるのが、思い出した地球パートの記憶である。

地球パートは要するに「学会を追放されてスローライフを送っていた俺がドS女に拉致られて、まさか世界を救う科学者になるなんて!? ~俺は中学教師でいたいんだ~」です。もう誇張はあるけど完全にこれ。THEなろうの気持ちよさがここにある。読者の引き付け方が上手い!終盤の地球パートも読みながら「なろうじゃん!!」って言ってた。

俺が大好きで新幹線使って池袋のグランドシネマサンシャインに行って計三回見た最高映画「トップガン マーヴェリック」も、ガキに舐められる→その後ワザマエを見せつけて全員わからせるなろうパートがあった。

結局、「なろう」って普遍的な気持ちよさがあるんだよな~!ヒーロー願望だからアメリカと相性いいのかも。

で、上巻半分までいったときに(最高の)「超展開」がある。
人によっては、もしかするとここまでたどり着けないかもしれない。自分も、上巻の前半は時間があるときだけちまちま読んでいた。
――が、その「超展開」を迎えてから一気にとまらなくなり、その日のうちに「何が何でも最後まで読まなければ」とほぼノンストップになった。

まっさらな状態でそれを読みたければ、ここでこの記事を閉じてくれ。読まない方が100楽しめるから。


↓上巻のネタバレを含む

【②上巻のネタバレを含むレビュー】

■この展開最高すぎる~!

ず~っと孤独な宇宙旅行。一人きりで目的地につき、さてどうやって太陽光減衰の対策をとろうか……そんな特大の課題に直面したとき、まさかの接近者が。

なんと、別の星から来た宇宙船だったのだ!!
う……うおおお~~~!!!!おおおおおおお~~~~!!!!!!

そんなことある!?!?!?!?
興奮度、すごかった。

で、もちろんこの作者はすごいので、ただのご都合宇宙人ではない。
言語、考え方、生物としての枠組み、何もかも違う他者と、お互い手探りの意思疎通が始まる。

エンジンを短く何度か噴射する。向こうも同じようにリズムを返してくる。
少しずつ接近する。
何かカプセルのようなものが送られてくる。開けてみる。中には惑星の模型が入っていた。少し考えて、それが彼らの母星を示していると分かり、こちらも同じようにして返す。

手探りすぎるコミュニケーション概要

…………ヒューッ!!!!
これが究極の異種族コミュニケーションだよ!!!!!!!!
宇宙人だよ!?!?何考えてるかわかんないよ!?!?!?

感覚器が違う。そもそも生きている星の気圧や大気が違うから、同じ場所にそのままではいられない。特大の「困難」を、どう解決する?

でもそれが……徐々にできるようになってくる。
これが本当に気持ちよかった!

手探りをいくつも経て、ついには(透明な壁越しに)対峙する。
ドキドキがすごかった……!

何もかも違う異星人と、主人公はゼロから対話、翻訳を試みる。そしてお互いの文化を知る。このパートがあまりにも気持ちよすぎた。

「もしこうだったら」の想定するの、オタクは大好きだ。
たとえば「もし好きな漫画のキャラが警察だったら、マフィアだったら、ファンタジー世界にいたら(各種〇〇パロ)」とか、「原作では敵同士のこの二人がもし恋人だったら」とか、そういうレベルのシミュレーションはカップリング妄想でよくするわけだが…………………………。

「何光年も離れた異星人とコミュニケーションするときのシミュレーション」、スゴすぎ!!!!!!!!!!!!!
思わず「うますぎますよ!!やってたでしょ!?」とハイパーインフレーションLINEスタンプを押しそうになりました。
架空の「あるある」作らせたら天下一だろ。

手探りの翻訳と、異星人の文化がたまらないッ~~!
俺は異種族フェチなので、この推しの睡眠に関する文化に萌え萌えキュンの萌えまくり確変バジリスクタイムになってしまった。カ~~ッ!!読んでくれ。

…………そう。推し。
俺……推しが……できたよ……異星人の…………。

■これが好きな人には絶対オススメ

ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~
 ドンピシャ。異種族の言葉をフィールドワークで勉強するぞ!って感じ。異種族の文化とかの想定がすごく丁寧で好き。
ゆる言語学ラジオ
 ゆる言語学ラジオの人コレ絶対好きだと思う。科学の話と言語学の話。そして、このラジオを面白がる層すべてにハマるはず。パーソナリティの方々絶対もう読んでると思う。(ささっと調べたところヒットしなかったが)
7days to end with you
 ごめん、未プレイなんだけどゆる言語学の実況で少し拝見しました。手探りで言語ルールを探ってくゲームなので、ぴったり。
ネシャン・サーガ
 大好きな児童文学ファンタジー。ファンタジーパートと現実パートが交互にあること、ディン=ミキトというとても賢い異種族との交流があることから想起。面白いので読んでほしい。電子版がなくて愕然としている。


↓以下は完全ネタバレを含む読後感想なので、読了してから読んでください。




【読後向けネタバレ感想】

■推しができた

ロ…………ロッキー~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!大好き~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

しあわせ、しあわせ、しあわせ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


最終章の数字の演出見た時鳥肌たった。
…………いやあ、ロッキーEND最高すぎたね。地球とか俺もうどうでもよくなっちゃった。よくなくないけど。
実用性のないグッズをほしい気持ちって今までよく分からなかったんだけど、はじめて「ぬい」がほしいと思ったかもしれん。

めちゃめちゃアンモニア臭くて5本脚で岩石のクモみたいなぬいぐるみ…………………………ほしい!
「エンッ!!!!!!!!」てなるけどほちい。

いやこんなに可愛く思えることある?
カタコトで一人称が「ぼく」だからというのもおおいにある。

感情が高ぶったときの強調表現が繰り返しになるのもいい。最高、最高、最高!ってつい真似したくなっちゃうな。

頑として譲らない睡眠の風習「見守る」が素晴らしかった。なんてカワイイ種族なんだ。しかもその理由となるロジックもパーペキ。

人間は計算も記憶も劣っているが、目が見えて科学を発達させた。エリディアンたちはその逆で、個体能力がすぐれて音で把握していて、キセノナイトを使いこなし、化学技術が地球より未発達。このバランスもすごくよかった!!
あの序盤からカテゴリがバディものになるなんて、予想できるわけがねえ!
お互いいいアイディアを出し合ってるのがすごくよかった!
終盤の、「このままじゃ餓死するンゴ」に対する解決案はハッとしたし、そういう気づきをロッキーが与えてくれて、ほんとにお前がいてよかったよ……になった。

相手が発展しすぎてるとおんぶにだっこになっちゃうもんね。
作中でも説明があったけど、お互い同じレベルで出会ったんだ。対等なバディなんだ。

主人公グレースの偉大な決断もすごくよかった。外人4コマの4コマ目になったよ俺は。
難しすぎる決断を、やり遂げた。そして…………最後、よかったねええええええええええええ!!!!!!!!!!!!そっちを選んだんだね。

アストロファージの仕組みや始末の仕方については、いや~すごすぎ。
習性の利用の仕方とか、品種改良の功罪とか…………。
うますぎますよ!!やってたでしょ!?
これ、別の世界であったことを書いてるんじゃないかな……。創作とは思えないよこんな緻密な話……。ちょっとずつうまく行った→危機→頑張って解決の流れが、すごすぎ。
ちょうど、達成感とドキドキハラハラのバランスが絶妙で、脳内分泌をコントロールされ、てのひらでコロコロいいように転がされた。
き…………きもちい~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!

アストロファージとかいう万能燃料使いこなした地球、えらいことになるだろうな。すっげえ発展しそう。ビートルズを受け取った後の地球のようすも、数行でいいから見たかったけど、きっと見せないのも「あえて」だよね。

この作者さんの他の作品はまだ読んでない。(映画オデッセイのみ)
多分、過去作とは違う路線、違うENDにしたんだろうな。
主人公のENDは不自由もあるだろうけど、やりたかったことをやれていて、本当によかった。大いなる決断だよ。胸に響いた。
ロッキー……ロッキー!!!!カ~~~~~~~ッ!!!!!!

エイドリア~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!



読んだ後「あ~面白かった!」だけでなく、その後のこともじーんと考えて浸れる作品、なかなかない。
俺はたいていのコンテンツは基本的に見返すことはない。
だからこそ、数少ない、リピートする作品に巡り合えるのは幸運だ。
特にロッキーとの交流パートは繰り返し読むだろう。

いやあ~、読んでよかった。
最高に面白かった。

なんか映画化するらしいな。オデッセイみたいに最高の映画にしてくれ。

しあわせ、しあわせ、しあわせ!

これは使いどころしかないスタンプ

おわり。

■【追記】ネタバレ感想もらった

お嬢様、ごきげんよう。
さっそくですが、お嬢様が推していた海外のSFお小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー上下巻』を読み終わりましたわ!

読んでいる最中にわたくし「どうせ最後は地球が救われて、平和に授業する主人公の引きでおわるんだろ?」なんて斜に構えていたんですの!
それがま・さ・か、異星で教鞭エンドだとは思ってもいませんでしたので、脳みそがしあわせ、しあわせになりましたわ~!ページ開いた瞬間のあの「章の文字!!」最高のサプライズでしたわ!!脳みそが洗われるってああいう感じですのね!
異星で過ごした長い期間を示すように、ロッキーの口調がメチャメチャ自然になっていたのも最高でしたわ~~!
記憶を失う前の主人公がヘイルメアリー号に乗りたくなくて「子どもの教育のために~」って言い訳してたのが、ラストでは異星で教鞭をとってまた違う味わいの使命に変換されてたのが、成長を感じましたわ~~!!!!先に教師をしていることを見せなかったのがニクいですわ!!!そのせいでわたくし「また弱虫風に吹かれてるよこいつ!」なんて思ってしまいましたもの!!……本当にそうかもしれませんけど、わたくしは変わったと信じたいですわ!

ロッキーと別れてからの折りたたむようなトラブルの連続、そして地球への帰還を諦めてロッキーの宇宙船へ向かった主人公、あそこの脳内ドーパミンやばかったですわ~~!!長尺なのに緊迫感あるシーンってどうやって作られてるんですの!?ロッキーとのフラグをコツコツと積み重ねてきた成果がここにぃ~~!!

とまあ、良書をご紹介してくださり、ありがとうございました!!!
一人称視点の小説があまり得意ではなかったのですが、おかげさまで見る目が変わりましたわ!

そうそうそうそうそう!!!!!!!
帰還して地球のHEROになるんでしょうね、あれ???帰れないあれっ!????????

からの

お持ち帰りEND

あああああああああああああ!!!!!!!!!
ロッキ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!しあわせ!

てえへんな環境ではあるけど、偉業だよ……!
「子供たちに教える」がまさか最後の最後でああいう形で生きてくるとは!

絶体絶命からの予想外エンドで、これ以上ない読書体験でした……。
ページめくる手が止まんないよね。

ゲームだったらマルチエンドあるでしょうね~!
最後ペラペラになってるのも演出としてサイコ~~!!!!

結局どっちのルートが幸せなんだろうって思うこともあるけど、あの状況では最高の選択だったし、最高バディが別れなかったのが嬉しい。

読んだときの最高の感情をまた思い出したよエイドリア~~~~~ン!!!!

最高!最高!最高!の感想をありがとエリド!

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