エッセイ【トランプ】
私は疲れて帰宅していた。
車ではぐったり、身体に力が入らなくて、しっかりと睡眠は取ったはずなのに、なんだか気持ちも沈んでいく。
助手席のシートを倒したって、高速バスのシートのように快適な感覚はない。余計に疲れていくみたいだ。
フロントガラスを強く打ち付ける流れる雨に不安を覚えながら、早く家につかないか、もやもやとしていた。
私には兄弟がいて、妹もいる。妹にはあまり頼られない姉だが、妹のことは好きだ。
いもうとと、仲良くなりたいと思っている姉だ。
趣味も合わず、なかなか難しい。
そこで私は「トランプ」を使うことにした。
ババ抜き、神経数弱、7並べ、バナナ、ジジ抜き、いろいろとやった。
神経数弱と神経衰弱がこの間まで区別がつかず、なぜトランプをするのに神経衰弱とまで言われるのかと疑問に思っていたこともあった。
そのつまらない話はまた別の機会に話す、としておく。
今日は新しく大富豪もやった。
私は学生の頃から馴染みがあったが、妹にはなかった。6,7年の年の差ともなると、ギャップを埋めるのはギャップの量でしかない、というような相反しているような状況にさえなってくる。
大富豪を一から教えるには、とてもルールが多い。
いつも無意識にルールに従っていた自分が、こんなにも膨大なルールを一回のゲームの中で駆使していたとは、と感心した。
後半の妹の「もうわかんない」という表情は忘れられないが、それさえも嬉しかった。
私は彼女と大富豪をやると、決めたのだ。必ず楽しくなってもらおう。
代わりに私は、人狼を教えてもらいたいと思う。
その時私も同じく妹のように、「もうわかんない」となるのだろう。
どんなに相手がうまく付き合ってくれなくとも、「一緒に遊んでくれてありがとう」という感謝の言葉は忘れないように心がけている。
本心であるし、言葉を添えて思いを伝えることは、とても大切なのだと学んだからだ。
返事はなくとも、必ず伝えていこうと誓った。
何か新しいトランプのゲームはないかしら?と考える、毎日の楽しみができた。
誰か、楽しいトランプゲームを教えてくれないかしら?
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