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#9 「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」 - 絢爛豪華な仮想楽団【The Beatles Album Review】

今回は、ビートルズの8作目のオリジナルアルバム
「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」をレビューします。

基本情報

オリジナルリリース 1967/6/1 (UK)

  1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band

  2. With a Little Help from My Friends

  3. Lucy in the Sky with Diamonds

  4. Getting Better

  5. Fixing a Hole

  6. She's Leaving Home

  7. Being for the Benefit of Mr. Kite!

  8. Within You Without You

  9. When I'm Sixty-Four

  10. Lovely Rita

  11. Good Morning Good Morning

  12. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)

  13. A Day in the Life
    Total Time 39:43

2017年にジャイルズマーティンによるリミックスが行われ、
ぐっと音が鮮明になりました。

現在も続けられているビートルズアルバムの
リミックスプロジェクトはこのアルバムから始まったんですね。

デモ音源なども付いた「デラックス・エディション」はこちら

レビュー

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9/10)

中期ビートルズの様々な実験が結実したひとつの成果と言われる作品。
「架空のバンドのライヴ」というコンセプトに基づいて制作された、
世界初のコンセプトアルバムとも言われています。
(その割には、そのコンセプトが生きているのは最初と最後だけな気もしますが)
また、アメリカでリリースされる際にはこれまで
レコード会社の方針で曲を減らしたり、入れ替えたりした
「US編集盤」が作られていましたが、
今作からUK盤とUS盤で曲目が統一されるようになりました。
(そんなことしたらコンセプトが成立しないもんな)

ジャケットには架空のバンドに扮したメンバーと一緒に
コンサートに招待したい有名人が描かれています。
よく見るとかつてのメンバー自身までいる。
LPの大きなサイズでじっくり眺めたくなるジャケットですね。
かしまさはCDしか持ってないけどさ。

楽曲解説

以下、アルバム内で特に好きな曲について一言ずつ。

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band

「僕たちサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドです!」という
自己紹介のオープニングナンバー。
いきなり仮想世界に引き込まれます。
演奏が始まる前のざわめきをよく聴いていると
「ポールのあほ!」と叫んでいる? 人がいるみたい(最近知った)。

With a Little Help from My Friends

前曲からシームレスにつながる2曲目。
「ビリー・シアーズ」という歌手に扮したリンゴが歌っています。
「僕の歌がヘタだったらみんな帰っちゃうかな? 頑張ってちゃんと歌うね」
という歌詞がリンゴのキャラに合ってて好き。

Lucy in the Sky with Diamonds

これぞサイケという幻想的な曲。
タイトルの頭文字が(偶然にも?)LSDになるので
まんまドラッグソングだと思われてしまったそうですが、
息子が描いた絵から発想を膨らませて
ルイスキャロル的なつもりでジョンが作った曲です。

Getting Better

歯切れの良いギターの音が気持ちいい曲。
ライヴをやっていた頃にリンゴの代役を務めたドラマーの口癖から
タイトルが付けられたそうです。
「だんだん良くなってくよ」というポールの歌詞に
「これ以上悪くならない」とジョンが逆の視点や
過去の自分の行動を反省する歌詞を付け足したことで、
メッセージに深みを持たせています。

Fixing a Hole

ポールなりの「サイケ」の解釈はこうなんだろうな。
「穴を直す」っていうのは自分の世界に入り込んでくる
外界からの邪魔者をシャットアウトする、ということらしい。

She's Leaving Home

リミックス版を聴いていちばんびっくりしたのがこの曲。
2017年リミックスはモノラル盤のミックスを元に制作されているそうで、
これまでのステレオ盤とキーが変わっています
(ステレオ盤はEメジャー、リミックスとモノラル盤はFメジャー)
同じアルバムなのにキーの違うバージョンが採用されるって
今では起こり得ないですよね。

Being for the Benefit of Mr. Kite!

ジョンが骨董品店で見つけた古いサーカスのポスターを基に作った曲。
「基に」というのは、ポスターに書いてあった宣伝文句を
ほとんどそのまま歌詞にしてしまったからです。おもしろいことするなぁ。

Within You Without You

ジョージが書いたインド曲。
インド哲学的な考え方に感銘を受けて
「Love You To」よりもずっと真面目な歌詞が乗っています。
一方で最後に観衆の笑い声のSEが入り
「そういえばこれは架空のバンドのコンサートなんだった」
ということを思い出させる。

When I'm Sixty-Four

「私がオバさんになっても」もとい「僕がオジさんになっても」です。
「64歳になっても僕のこと愛してくれる?」と10代のポールが書いた曲。
デビュー前にライヴで演奏することも多かったらしい。
ポールのお父さんが当時64歳になって発掘されたそうです。
ポール本人はもう64歳どころかもうすぐ81歳ですが、
最初の奥さんを亡くして、2人目の奥さんとも離婚して
独り身で64歳を迎えるとは思ってなかっただろうなぁ。
(今は3人目の奥さんがいますけどね)

Lovely Rita

歌詞に出てくる「Meter Maid(メーターの恋人)」とは
駐車違反を取り締まる婦人警官のことだそうな。
アメリカ英語の表現で、その語感を気に入ったポールが
歌詞に取り入れて作った曲(Wikipedia情報)。

Good Morning Good Morning

とにかく賑やかな曲ですね。
中学生の頃目覚まし時計のアラームに設定してました。w
いろんな楽器、いろんなSE、そして変拍子。
朝って感じがする曲です。

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)

「いかがでしたか?」的なリプライズ曲。
原曲より一音下(Fメジャー)で始まって
こっそり転調(Gメジャー)するの好き。

A Day in the Life

アンコール的な位置づけでしょうか。
ジョンのパートとポールのパートが絶妙にマッチする
奇跡の配合のような曲。
途中に入るオーケストラが怖い
というか、ジョンとポールの訳わからん指示を
ジョージマーティンがここまでいい感じに翻訳できたのがすごい。
最後の「じゃーん!」というピアノが鳴った後、
完全に音が消えるまでの間にいろんな物音が入っているのが
静かな場所でイヤホンを付けて聴くと分かります。
音量を上げてみたくなりますが、
その後に続くループ音声
(レコード盤の最内周に収録されていた無限ループのやつ)
めちゃくちゃびっくりするので気をつけてください。
最初に聴いた時は「ヤバい人に電波ジャックされた」ってガチで思った。w

まとめ

気づいたら全曲解説してた。
正式にコンサート活動を停止した後のビートルズが、
その分の労力を費やして作り込みまくったのが分かるド派手なアルバムです。

それでは、かしまさでしたー。

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