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スタンフォードの空気感から考える、スタートアップ業界に人を呼び込む方法

Clubhouse、話題ですね。Clubhouseの創業者のPaul DavisonとRohan Sethはともにアメリカ西海岸のスタンフォード大学の出身です。そのClubhouseで私も週末にスピーカーとして話す機会がありました。

イベント名は「noteのCFOとバフェコと企業分析ハックが話す、スタートアップに飛び込むということ」というタイトルで、企業分析サービスで有名なバフェット・コードさんからお誘いいただき、こちらも企業分析で有名な企業分析ハックさんもモデレーターとして参加して開催しました。

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前日にカジュアルに決まったにもかかわらず、正確な人数はわかりませんが延べでおそらく数百人くらいの人に聞いていただき、Clubhouseの盛り上がりを感じました。

テーマの「スタートアップに飛び込むということ」は、私も今年の最初に出したnoteでベンチャー、スタートアップにもっと人を呼び込みたいという思いがあったので、ちょうどタイミングもよかったです。

その中で、意外と私が留学していたスタンフォード大学での経験について話すことが多く、それが今の私のキャリアに繋がっているとあらためて実感することができましたので、今日はスタートアップに人を呼び込むスタンフォードの空気感について書きたいと思います。

スタンフォード大学というと、シリコンバレーにあるということもあり「起業」というイメージが強いと思います。これは肌感覚でも定量的にも合っていて、2020年のビジネススクールの卒業生のうち18%が起業というデータがありました。

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※ 上記グラフはスタンフォード大学ビジネススクールウェブサイトから引用

上の数字を見るとわかるように、そもそも5分の1近くが起業しているということで高い数字ですが、これは卒業後すぐの数字なので、卒業後とりあえず学費ローンを返すためにコンサルや金融などの仕事を経てから起業するという人は含まれていません。そういう人もかなり多くいるので(むしろそういう人の方が多いかも)、起業に興味のある人は優に半分は超えて、少しでも興味がある人などを含めると肌感覚ではほとんどの人が起業に興味があるのではないかという印象です。

日本だと、大学の起業サークルとかだと起業に興味のある人が多いかもしれませんが、そういった環境でも卒業後18%の人が起業するということはないので、この数字の高さがわかると思います。

では、なぜスタンフォード大学でこれだけ起業する人が多いのでしょうか?

大学の周りにGAFAを始めとするテック企業やスタートアップが多かったり、ベンチャーキャピタルなどの資金を提供するプレイヤーが多く、起業に有利なエコシステムが揃っているということはもちろんあるのですが、私はそれは要素の一つで、むしろ起業する人が多いことの結果と考えています。

また、ポジティブなマインドセットが浸透しておりチャレンジが奨励される、失敗がネガティブな評価とならないということももちろんあると思います(イベントでもこの話をしました)が、これもそういったエコシステムの結果と考えています。

あくまで私の考えですが、アメリカ人が日本人と比べて起業家精神に富んでいるとか、西海岸の人が開拓者精神が旺盛であるとか、少しはその要素もあるかもしれませんが、絶対的な理由ではないと考えています。なぜなら、ビジネススクールにきている学生のMBA前のキャリアは、すでに起業している人もいますが、多くはコンサルや投資銀行などのいわゆるエスタブリッシュメントな仕事を経てからビジネススクールにきているからです。ちなみに、Clubhouseを創業したPaul Davisonも新卒でコンサルのBain & Companyを経てスタンフォードのビジネススクールにきてから起業していますし、もう一人の創業者のRohan Sethも新卒Googleです。

ではなぜスタンフォードで起業が多いのか?

定性的で恐縮ですが、一番は「起業がもっともカッコいい、クールである」と価値観がスタンフォードに根付いているからではないかと考えています。

ビジネススクールで卒業後の進路の話になった時に、なんとなくの雰囲気として、優秀な人から起業、次にスタートアップ(知名度はあまり問わない)やVC、そしてGAFAなどのテック企業がきて、その後にビジネススクールの伝統的な就職先であるコンサルなどが出てきます。もちろん最終的には個々人の興味の問題なので例外はいくらでもありますし、金融系のキャリアであればヘッジファンドやPEファンドなども入ってきますが、優秀な同級生が起業すると聞くとポジティブな意味で「やっぱりね」という空気感があります。

この、コミュニティの何かクールとされているかという空気感が重要だと思っていて、例えば日本でも、大学受験では医学部が偏差値が高く、なんとなく成績の良い人が医学部にいったり、就職であれば昔だと大蔵省とか、リーマンショック前の投資銀行とか、今だとコンサルが人気だったり優秀な人がいくイメージがあるかと思います。これが悪いという話ではなく、個々人のレベルではもちろんきちんとした志望動機や想いがあると思いますが、マクロで見ると人気のセクターに人材が集まる傾向があると考えています。

アメリカ人も日本人も、やはり人間なので、高い山があれば登るのが当然という要素があって、スタンフォードが上手いのはその人の興味を成長産業に向かわせる空気感の醸成の仕方が絶妙と思いました。

アメリカも常に起業がクールというわけではなく、Facebookの誕生を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」では、マーク・ザッカーバーグはハーバード大学でモテないオタク(a nerd)として描かれていますし、その頃までは一流大学を出てMBAをとってウォールストリートの投資銀行で働くというのがいわゆるアメリカ的な典型的なエリートのイメージだったのではないでしょうか。

その後金融資本主義が陰りを見せ、代わりにイノベーションを生み出すスタートアップやテック企業が人気になって、そういった会社をゼロから興す起業家が最もクールであるという空気感が醸成されていて、ハーバードなどの東海岸でも起業は人気になっていると聞きますが、スタンフォードはその空気感を極限まで凝縮した状態になっていると感じます。

職業に貴賎はなく、私自身は大企業 vs スタートアップという対立構造は好んでおらずどの仕事も社会に付加価値を生み出す有用なものと考えていますが、国や大学としてポジションをとって成長産業に若い人を行きたいと思わせるような空気感を作るのは非常に重要だと思いますし、実際に私も刺激を受けて今スタートアップで働いています。

そういえば日本では、数年前に東京大学の最寄り駅の駒場東大前の駅のホームで、「若くて優秀なら、スタートアップするしかない」というベンチャーキャピタルの駅広告を見つけました。コピー自体はすごく刺激的なコピーで必ずしも全員に当てはまるものではないかもしれませんが、たとえ盲信的でも、起業がクールという価値観、空気感をコミュニティの中に醸成して、世の中に拡げていくことが、将来日本の産業力を引き上げるとスタンフォードの経験から感じています。

スティーブ・ジョブズの "Stay Hungry, Stay Foolish"の名言もスタンフォード大学の卒業式で語られた言葉ですが、これは優秀な若者がスタートアップという非常にチャレンジしがいのある魅力的な環境に飛び込むことの後押しをする、スタンフォードの空気感を体現した言葉といえるかもしれません。

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