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Listen to my music.

帰省する。足を運ぶのは何年振りだろうか。
思い出せないくらい、帰っていない。
新幹線からの風景は、山とトンネルが続く。


大学進学を機に実家を出た。
1日でも早く、家を出たかった。


実家は、絶望の塊だった。



今思えば、
些細なことで心を支配されていたのだとわかるが、
インターネットの無かった時代、
黒電話しか無かった時代にとって、
他人の家で何が起きているかなんて、
知るすべは無かった。




小さな小さな自分だけの世界で、誰にも相談できず、深い絶望に埋もれていた。


しかし、当時インターネットがあったからと言って、誰かに救済を求めただろうか、とも思う。

否、それはできなかっただろう。
それは今の時代も、こどもの絶望は無くなっていないからだ。


こどもは、

感受性は強いが、経験値が低く視野が狭い。
自分を責めがち。

家に寄るが、
体裁を取り繕う感覚が染み付いて、
簡単に他人に相談できない。

絶えない夫婦喧嘩は、私のせいで起こっているのだと、ずっと思ってきた。


私がお父さんを怒らせた。
私がいい子にしないからだ。
私がいい成績を取っていないからだ。
できない私を、お母さんがかばってくれている。

きょうだいが2人いるが、彼らも同じ気持ちだったと思われる。
確かめた事はない。
そんな会話をする暇は無かった。
自分が生きることで、精一杯だった。

安心して暮らせる場所は実家ではないのはわかっていたが、
そこしか選択肢は無かった。

いつの頃からか、この家を出ると思う事が生きる糧になった。


負のスパイラルを作り込んでいた私。
絶望に浸って、悲劇のヒロインになっていた私。


親も、愛情を知らない人たちだった。



封印していた絶望を解く日がやってきた。

誰も悪くない。


親も、きょうだいも、私も。


ただただ絶望しているあの頃の私に、会いに。
もういいよ、って言ってあげよう。




Listen to my music.
空はいつのまにか、快晴だ。

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