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五行歌会で点が入る歌の二つのタイプ

 こんにちは。南野薔子です。
 五行歌の「歌会」で点が入るタイプの歌には二通りある気がしています。それについて書きます。

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 五行歌の「歌会」は他の短詩系文学の歌会や句会と同じ形式で行われていると思われる。すなわち、参加者は歌を提出し、それらの歌が作者名を伏せた状態で参加者に配布される、参加者はそれらの歌の中から、決められた数の歌に、決められた点数を配分する。だいたい、点を入れられる歌の数は全体の半数程度、点数の総計はその1.5倍程度に設定されることが多い。たとえば、12首の歌がある場合「6首9点」となるわけである。参加者はよいと思う歌を6首選び、9点を配分する。すごくよいと思った歌には3点、なかなかよいと思った歌には2点、よいと思った歌には1点という感じである。一首につき最高点はだいたい3点であり、歌会の規模によって「3点入れるのは○首まで」と制限がつく場合もある。たとえば6首9点であれば2点×3首と1点×3首の計9点、または3点×1首と2点×1首と1点×4首の計9点というところに落ち着くかと思う。
 それらの点数が集計され、点の多いものから一席、二席、三席……と順位がつく。この順位発表は点数集計直後の場合もあるし歌会の最後ということもある。いずれにせよ、作者名は伏せたまま、参加者は歌についてコメントを述べる。どこがどういうふうにいいと思ったので点を入れたのかや、疑問がある場合はそれを述べたりもする。そしてその後作者が明かされ、作者から自分の歌についての解説やコメントがある。
 歌会の主眼は、コメントを述べ合い、他の人の歌の見方の幅が広がったり、自分の歌の長所短所がわかったりすることにあると思っている。が、点数がつく以上、その点数、順位が気になるのも自然なことである。人によって、また時によって、順位を狙いにいくケース、順位はさほど重視していないケース、さまざまであろうとは思う。私はだいたいあまり順位は重視しないが、順位がよければそれはそれで嬉しい。
 さて、しばらく前に栢瑚のブログの方でもちょっと触れたのだが、点数を集める歌には二パターンあると思っている。
 一つは、参加者の大部分、どうかすると全員から、まんべんなく1点以上を集めるタイプ。裾野の広い山のイメージというか。内容的に普遍性があり、共感や感心を呼び起こすタイプの歌であるとか、あるいは使われている表現が巧みでかつわかりやすく腑に落ちるというタイプの歌が多いという気がする。もちろんこの両方の特徴を備えている場合もある。
 もう一つは、そんなにまんべんなく集めるわけじゃないけれど、入れる人は2点とか3点とかを入れていることが多いという歌。こちらは切り立つ岩山のイメージか。内容なり表現なりがそれほど普遍的でない、でもその歌と相性の合う人はぐっと惹きつけられるというような。
 まあ、多くの人が点を入れてなおかつその多くが2点や3点を入れるというものすごい歌も時折出現するのだがそれはさておき。
 この裾野型と岩山型の二タイプの歌がどのように出現し、どのように順位に影響するかは歌会の規模によっても違う。少人数の歌会だとこの二タイプの区別がそもそも発生しづらい。歌会の規模が大きくなればなるほどだいたいにおいて裾野型が上位に行きやすくなるという傾向はあると思う。中規模の歌会では、この両者が発生し、点数的にも拮抗することが起こりやすいような気がする。
 もっとも、歌会というのは会ごとにそれぞれに個性があって、私は複数の歌会に同じ歌を出してみたという経験はないのだが、どうも他の人の話では、ある歌会で評価された同じ歌が別の歌会ではさっぱりだったなんてこともざらにあるらしい。ある歌会で裾野型だった歌が他の歌会で岩山型になったというようなこともあり得るだろう。
 さらに云えば、そもそも「歌会での評価」はその歌の評価の一部分に過ぎないというのも確かである。たとえば、歌会でぱっとしなかった歌が、月刊「五行歌」誌で巻頭や佳作に入ったり作品評に取り上げてもらえたりする、あるいはその逆で歌会で高得点を取った歌が誌面ではさっぱり、ということはざらにある。ついでに云うと、歌界の中で名だたる実力者と目されているような方々でさえ、その多くは歌会で「0点」を経験している。
 というように、歌会での評価は決して固定的なものではなく状況によって変わり得るものだということを踏まえた上で、自分の歌の志向性が裾野型なのか岩山型なのか、自分の歌会での点の入れ方はどうなのか、ということを考えてみるのもちょっと面白いかもしれない。まあ裾野型を狙うとか岩山型を狙うとか狙ってうまくゆくものでもないのだが、私はどちらかというと自分の歌は岩山型であると嬉しい。多くの人からひろく点数を集めてしまうと、嬉しい一方で「ひょっとして私らしくない歌を書いてしまったのでは」と不安になる程度にはひねくれて(?)いる。あと、他の人の歌への点の入れ方も「あれ? 私これいいと思って2点入れたけれど、他の人はそんなに点入れてないのね……」と結果的に岩山化貢献しているみたいなこともわりとよくあるような気がする。
 何はともあれ、参加者の歌はもちろん点数の入れ方にも個性があり、その個性が交流し合うことでいろいろな気づきや、思いの深まりなどがあり、それがよりよい歌の実作や観賞につながるということがやはり歌会の醍醐味なのである、と優等生的にまとめてみる。

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