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2050年みんなの未来の描き方 Ⅱ-2

こんにちは。貸本屋モトです。未来の描き方パート2その2です。前回書ききれなかった未来を予見する「5つの法則」の最終章の紹介です。
前回の5つの法則に基づいて、著者が立てた予見が最終章に記されていました。

過去の記事は下のリンクから。

⑧最終章 12のパラダイムシフト

最後の章は、未来を予見する時に何に着目して予見するべきか?
ということで「パラダイム」に着目して語られていきます。
5つの法則を基にした著者の予見を記載しているので、畳み掛けるようにビシバシくるワードが散りばめられ内容の濃い章になっています。いわば本書の真骨頂といった趣です。
では、簡単にですが紹介したいと思います。

12のパラダイムシフト

  1. 善意の経済

  2. 参加型イノベーション

  3. 政治、経済、文化の直接民主主義

  4. イメージコミュニケーション

  5. 考えると感じる文化の融合

  6. ダ・ヴィンチ型社会

  7. 脱ペルソナ社会

  8. コスモロジーの時代

  9. 新たな多神教

  10. 生命論的世界観

  11. 科学技術と生命論的智恵の融合

  12. 東洋、西洋文明の融合

12のパラダイムシフトが繋がったストーリーで記載されているので、読んでいただくのが最も早いのですが、内容をピックアップして紹介したいと思います。

1.善意の経済

経済のパラダイム転換について。最古の経済は「贈与の経済」でした。
現在は市場主導の「マネタリー経済」と言えます。これからは、「マネタリー経済」と「ボランタリー経済」が融合し、CSRや社会起業家が牽引するようになるといいます。
特に地球環境問題は喫緊の課題となります。
これまでは、「外部経済の内部化政策」と呼ばれる「社会的費用」や「外部不経済」を市場経済の中に取り入れ、市場原理によって、環境対策を進める手法がとられてきました。例えば「排出量取引」もそれにあたります。
これからは、「マネタリー経済」の中に「ボランタリー経済」を取り込むのではなく、融合した「新たな経済原理」で地球環境問題の解決を図っていく手法になっていくといいます。

カーボンニュートラルの取り組みなど筆者の言葉に近づいてはきていますし、ESG投資等進んでいるものの、「新たな経済原理」までには至ってないように感じます。

逆に外部不経済を国内に取り込んで既存の経済原理に任せて解決を図ろうとしたため、分断や格差が拡大しコロナで露わになったBlack Lives Matterのような問題に発展してしまっているように思います。

「企業通貨」や「地域通貨」が新たな経済原理を加速し「貨幣」に対する、人々の意識の進化が起こると紹介し「貨幣」とは、「社会を変えていくための手段」であることを理解し始め、具体的な行動に向かっていくのではないかといっています。
本書発刊から15年たっていますが、望むべく状態には未だ至っていないようです。

2.享受型のイノベーションから参加型のイノベーションへ。

リナックスのようなオープンソースが進み、有志によるコミュニティソリューションが進み、企業と消費者が一緒に作るプロシューマ型開発に移行していくと紹介しています。それにより群衆の智恵、集合知が発揮されることになるといっています。

ここはかなり近づいている面もありそうです。OSS(オープンソースソフトウェア)もわかりやすい事例ですし、Git-hubのようなオープンプラットフォームは、参加型イノベーションを促進する新たな生態系を作っています。
このような共創可能なプラットフォームから新たなビジネスも生まれてきているように感じます。

3.間接民主主義から参加型の直接民主主義に

デジタルの活用によって政治、経済、文化それぞれで参加型の直接民主主義が実現していくのではないかと語っています。
そして、民主主義とは単に多くの人々が意思決定に参加することではない。民主主義とは、多くの人が社会変革に参加することである。と大変示唆に富む記述で、まさにこれからの未来がそうあってほしいと願います。

4.イメージコミュニケーション

Youtubeを例に挙げ、写真、映像、音楽などの非言語コミュニケーションの文化が生まれてくると。

Youtubeに加え、メタバースも拡がりつつある昨今ですので、あながち間違いではなさそうです。

5.考える文化から感じる文化に

考える文化↔︎感じる文化
論理↔︎感覚
理性↔︎感性
左脳↔︎右脳
ここで前回記事で紹介した右脳、左脳にも触れられていました。これらの二項対立的に捉えられていたものが統合されていくだろうと語られています。

6.ダ・ヴィンチ型社会に。

シングルタレントからマルチタレントの社会になり、レオナルドダ・ヴィンチほどではないにしても自分の中に眠る多様な才能を開花させる時代となって、多様な価値観の共生が起こるといいます。
第一法則で語られた螺旋的プロセスの中で進化とは多様化のプロセスであることとも通じています。ここで強調されていたのは、多様性を認めるのではなく、多様性そのものに優位性があるという価値観に変わっていくだろうと語られています。

7.脱ペルソナ社会

ダ・ヴィンチ型社会になることで、1つのパーソナリティで生き周囲との摩擦を避けるために1つのペルソナを選択してきた時代から、自己の中の「多様なパーソナリティ」を認め、「多様な価値観」を共存させる脱ペルソナ時代になるといいます。

こちらはプロボノや副業の緩和など、脱ペルソナ社会になりつつあるように感じます。しかし、まだまだところによれば古い価値観と新しい価値観がせめぎあっているようにも感じます。

8.コスモロジーの時代

世界をひとつのイデオロギーに同化させていくというパラダイムがこれまでの世の中であったが、それが限界に達し、多様な価値観の共生とそこに最大の価値を認めるコスモロジーのパラダイムが拡がっていくといいます。

こちらも、まだイデオロギーからの変遷の途上という気もします。最近では、シリコンバレー から発されたソリューショニズムというイデオロギーが出てきたり

ごく単純に言えば、「ほかの選択肢も時間も財源もないから、社会の傷にはデジタルの絆創膏を貼ることくらいしかできない」と考える思想だ。

https://courrier.jp/news/archives/198677/
エフゲニー・モロゾフ「ソリューショニズムが人間の想像力を弱らせる」

認知資本主義なる解釈が出てきたり、多様化の途上のように感じます。

非物質的なもの(知識 や情報)の意義が増大し,人間の認知能力へ の依存度が高まったという意味において,現 代資本主義に対して認知資本主義という新たな名称が付与された

認知資本主義―21世紀のポリティカル・エコノミー
山本 泰三 編

9.新たな多神教

コスモロジーの世の中での宗教は、歴史を振り返ると八百万の神のアニミズムから一神教が興隆した歴史がありますが、これからは、メタレベルの多神教になるのではといっています。

10.機械論的世界観から生命論的世界観へ

機械論的世界観:世界が機械のように小さな要素に分解してそれぞれの要素を詳しく分析すると、世界が理解できるという「要素還元主義」
から
生命論的世界観:物事が複雑になると、新たな性質を獲得するという複雑系の科学により生命論パラダイムの科学
へ進化するといいます。
ここで、古い文明に宿った智恵から学ぶべきだといいます。
なぜなら仏教思想の「自然じねん」やネイティブアメリカンの「土地とは、子孫から借りているものだ」など、古い文明の中に生命論的な智恵が数多く眠っているからです。
文明の螺旋的発展が起こるため、古い文明の智恵の意義は非常に大きいといいます。

11.科学技術と生命論的智恵の融合

インターネットによりコミュニティの自己組織化やコミュニティでの新たな知識の創発等が進み人々の意識へ生命論的世界観が浸透していくといいます。世界観が変わることの意味は極めて重要であるといいます。
なぜなら

科学や技術、組織の制度というものは、その背後にある「思想」や「智恵」によって、その限界が定まってしまうから極めて重要

だと。
SDGs達成のためにIDGsが必要とされるようになったことや、システム思考で物事を考える時にメンタルモデルの理解が重要であることが想起され、「思想」や「智恵」がIDGsで言う、内面の成長と同じことを言っていると思うと非常に合点がいきます。

12.東洋と西洋文明の融合

自然の中に宿る神秘や、自然の持つ不思議を感じる心を示した、レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」。ドイツの経済学者、エルンスト・シューマッハの「仏教経済学」などの紹介があり、東洋文明に宿る生命論的な思想や智恵が蘇り西洋文明が育んだ最先端の科学技術や資本主義と融合していくといいます。

これに関しては、実際に西洋で東洋思想の統合の潮流が出てきて、組織論や思想にも取り入れられるようになってきました。
例はたくさんありますが、
システム思考 ドネラ・メドウズ、
学習する組織 ピーター・センゲ、
行動探求 ビル・トルバート
など、東洋的思考法を積極的に取り入れているように感じます。さらにケン・ウィルバーのインテグラル理論はまさに西洋と東洋の叡智の統合を目指した理論です。

後半になるにつれて、自身の興味のキーワードや共感できる内容がビシバシと出てきて、末長く考え方の拠り所にできるとても良い書籍でした。

以上 2回にわたり、未来を予見する「5つの法則」を紹介しました。
次回からは、未来の描き方の方法論に入っていきたいと思います。

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