ファクト・チェック①大西健丞さん、その話、本当ですか？
ふるさと納税などで一般個人から寄付を集めたり、国や国際機関から巨額の助成金を受け取って活動しているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)のインタビュー記事をつい最近見かけました。
その内容は、本人の著書「世界が、それを許さない。」（2017年、岩波書店）と重なる部分が多そうで、PWJがどのような課題に取り組んできたか、を振り返る内容です。
しかし、著書と同じく、誇張されたり、事実とは異なる点も少なからずあるようなので、ここでファクト・チェックをしておこうと思います。
■兄妹起業「ヴィラ」不振で撤退
例えば、インタビューにこんな箇所があります。
▶2005年には、「風の音舎」という株式会社を設立しました。自分で会社を作って、NGOから（お金を）もらわなくても自分で稼いでみようと思ったことがきっかけです。数年間やりましたが、正直言って、面白くはなかったですね
▶当時は風の音舎をやっていたから、ある程度お金にも困らず暮らせるようにはなっていた
「風の音舎」は大西健丞氏が実妹・由起氏を代表者として起業したリゾート開発会社でした。本社を広島県福山市の鞆の浦に置き、そこからクルーザーで行き来する愛媛県上島町の離島・豊島（とよしま）で、高級リゾートホテル「ヴィラ風の音」（営業期間は2007-2012年）を開発したのです。
妹が社長、大西氏も取締役、そして前述の著書によると、大西夫人の純子氏も一時期はヴィラの支配人を務めていたそうです。多少、誇張はあるかもしれませんが、一時的ではあれ「ある程度お金にも困らず暮らせるようになっていた」というのはウソではないかもしれません。
「ヴィラ風の音」（全４室）は2007年４月に完成しました。開業当初は、会社が所有するクルーザーのメイかサツキによる鞆の浦から豊島への送迎付き１泊5万8900円でお客を集めていたようです。
先に掲げた大西氏の著書によると、大西夫妻はそこで結婚披露パーティーも開いたそうです。新婚のふたりは大阪や東京では体験できそうにないセレブの気分を存分に味わったことでしょう。
しかし、その高揚感、長くは続きませんでした。「ヴィラ風の音」の経営は大失敗だったからです。
会社の代表は２年後の2007年２月、草創期からピースウィンズ・ジャパンを資金援助していた化粧品の販売員グループの出身者に交代していました。
■事業が失敗、取締役を退任
化粧品販売員らは会社の事業として化粧品販売を行い、その儲けから大西氏が主導したヴィラ風の音の開業資金をひねり出しました。
開業までに２億2千万円程度投資したそうです。しかし、「ヴィラ風の音」は営業不振が続き、思うように収益を生みませんでした。
化粧品セールスからの利益も食われていく恐れがあって、資金を援助した化粧品販売員らは大西氏に対する不満、不信感を募らせました。
社長らは2012年、我慢も限界と考えて、観光事業からの撤退を決めました。そして、「ヴィラ風の音」建設の言い出しっぺである大西氏にも取締役退任を求めました。過去のnote記事でも詳しく紹介していますのでお時間あるときにお読みください。
インタビュー中のコメント、「正直言って、面白くはなかった」とは、社会起業家にとってお金儲けなんかつまらないことだとでも言いたげですが、負け惜しみです。「ヴィラ風の音」の経営が失敗し、会社の中に居場所がなくなったことへの苦い思いを想像しながら読むといいでしょう。
彼はそのようにして資金援助してくれた人と別れ、縁が切れていくようです。
▶復興支援を懸命にやっていたら、会社なんてやっているのがバカらしくなってしまって、「風の音舎」はやめました
大西氏はこうも語っていますが、「会社なんてやっているのがバカらしくなって」という発言を聞くと、彼を資金面で一生懸命に支えてきた化粧品の販売員らは悲しむことでしょう。
「ヴィラ風の音」は後に売却されましたが、関係者によると、その時の価格は3000万円余りだったそうです。大西健丞氏が実妹とともに始めた観光事業は、会社に大きな赤字を残して幕を閉じたのでした。
大西氏は著書で、ピースウィンズ・ジャパンの活動資金も「風の音舎」のもうけから捻出したかのようなことを書いていますが、こうした経営状況を考えると、にわかには信じられません。
著書にも、どんな方法でいくらくらい貢献していたのかは書かれていないのです。むしろ、赤字事業の尻拭いをひとに任せて、その場から消えていったのではないでしょうか？
私はいつも感じるのですが、大西氏が書いたり、話したりする内容には、肝心な部分についてあいまいな表現、はぐらかすような展開が目立ちます。
「風の音舎」のビジネスを通じて、大西氏がピースウィンズ・ジャパンにどのような資金的貢献を行ったというのか、データで詳しく示して欲しいところです。
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「ヴィラ風の音」については、過去にもnoteで幾度か取り上げています。お時間許せば、お読みください。ご意見や関連情報の提供も歓迎します。
ヴィラ風の音①
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