作家の怨念を感じる文章
ある作家の講演会に行き、親睦会に参加した。
その作家を突き動かすものは、ある人物との出会いにより始まった恨みだという。
そして、その作家は、良い人間のフリをした悪人が粉砕される姿こそ、日本人が一番美しいと感じる瞬間だ言い放ち、不敵な笑みを浮かべていた。
恨みの持つ凄まじいエネルギーが、その作家からも放たれており、いくばくかの恐怖を感じずにはいられなかった。
彼のまだ発表していない小説を少し読ませてもらったが、それもまた恐ろしい恨みの話であった。
個々の文字からすら放たれているように感じる、負のエネルギーに圧倒された。
忠臣蔵などに代表されるように、日本人は怒りや恨みにまみれた作品を好む民族である。
我々のDNAの中に、恨み・復讐への活力なるものが膨大に埋蔵されているのかもしれない。
日本のSNSなどを見れば、少しでも悪いとされることをした人間が吊るし上げられ、社会的に抹殺されることが日常となっている。
作家いわく、その光景は日本人にとっては甘美な究極のエンターテインメントであり、それなしに我々は生存しえない民族なのだと楽しげに語っていた。
同意しかねると生理的に言いたいが、その理由を語れと言われたら口ごもるより他ないと感じた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?