ショートショート『芸人』
とある喫茶店
男A「まだかなー・・。緊張するなー・・」
お店の扉が開き男Bが入ってくる
男A「あ!来た!おい、こっちこっち」
男B「おー!久しぶりだな!」
男A「高校以来だもんな。急に呼び出して悪いな。」
男B「いやいや。てか、お前芸人やってんだな。田中から聞いたよ」
男A「え?あ、うん、そうなんだよ。でもまだ養成所に通ってるレベルなんだけどね・・」
男B「いやー、まさか大人しいお前が芸人になるなんてなー。」
店員が近づいてきた。
男B「すみません!アイスコーヒーひとつ。」
男A「今日は俺が奢るよ。」
男B「え、いいのか?」
男A「ああ、もちろん。それに今日はお前に頼み事があるから・・結構大事な話なんだ・・」
男B「・・・そうか。じゃあお言葉に甘えて。
で、お願いというのは?」
男A「ああ、お前って学生時代本当面白かったよな。
ボケのセンスはいいしツッコミもすごかったし。
みんなの人気者だったよ。」
男B「いや、そんなこと・・でもまぁ、お前が言うならそうなのかな。」
男A「そうだよ!俺が知ってる人間の中で一番おもしろいのはお前なんだよ。
・・そんなお前に折り入って頼みがあるんだ。」
男B「え・・あ、ああ・・」
男A「俺の・・」
男B「・・」
男A「俺の・・・・・ネタを見てくれ!」
男B「へ!?・・あ、ネタ?・・・ああ!ネタね!うんうん。でも、おれ素人だけどいいの?」
男A「ああ、さっきも言ったけど俺にとってはお前が一番面白い友人だ。だからお前の本気のアドバイスがほしいんだ」
男Aは鞄からネタ帳を取り出し男Bに渡す。
男B「・・・よし、分かった。お前のためにも素人目線だが、それなりに厳しく読ませてもらうよ」
男A「ああ!頼む!」
男Bはネタ帳を読み始める。
男B「・・・はっはっは。うんうん。・・いや、なんでだよ!」
男A「おお!ツッコミいれてるね!」
男B「ああ、もしかしたらツッコミやるかもしれないしな?」
男A「え?」
男B「あ、いや。なんでもない。」
ネタ帳を全て読み終える。
男A「・・どうかな?」
男B「うーん。まぁ、少し強引なところのあるコントだったな。
でも唐突にシュールに走るところはインパクトあって
俺は引き込まれたかな。この調子でもう少し丁寧に作れば
すごい面白いコント作品ができそうだよ。」
男A「これ漫才なんだよ」
男B「いや漫才なんかい!これ」
男A「おお!さすが!キレッキレのツッコミだな!」
男B「いやー、ツッコミは俺で決まりかな・・」
男A「え?」
男B「いや、なんでもない。」
男Aはネタ帳を鞄にしまった後真剣な眼差しで男Bに語りかける。
男A「なぁ、俺さぁ・・芸人に向いてるかな・・」
男B「・・・うーん、正直まだそれは分からない。
今後のお前の努力次第だと思うし・・あー、あと、お前を活かせる相方選びがキーになってくると思う。」
男A「相方・・・か・・・。
なぁ、実はもう一つお前に頼みがあるんだ。」
男B「・・・ああ、なんとなく察していたよ・・言ってくれ。」
男A「・・・・頼む!!」
男B「・・」
男A「田中の連絡先教えてくれ!」
男B「えええ~~!!」
新喜劇ばりに椅子ごとひっくり返る男B。
男A「え?大丈夫?すごい勢いでひっくり返ったけど・・」
男B「いや、お前・・田中の連絡先って・・」
男A「そうなんだよ~、田中の連絡先が分からなくてさぁ~。消しちゃったのかな?」
男B「いや、まぁ・・田中の連絡先は知ってるけど・・お前田中とコンビ組むの?」
男A「ああ、俺はあいつといっしょにお笑いをやりてえ!」
男B「いや、でも田中ってお笑い好きじゃなかったような気がするんだけど・・」
男A「だからなんだよ!あー見えて実はあいつにはお笑いの才能が眠ってると俺は睨んでるんだ!
・・なんとなくだけどな・・。俺はあいつにかけてみたい!」
男B「・・・あっそ。まぁ、誘ってみれば。」
男Bは男Aに田中の連絡先を教えた。
男A「ありがとう!!じゃあ俺はさっそく田中に電話して直接会いに行く!
会計は済ましておくから!今日は本当にありがとう!じゃあな!」
男B「・・うん、じゃな。」
男A「田中と俺のコンビの最初のお客さんはお前だからな!じゃあな!!」
男Aお金をレジに叩き置き、勢いよく店をでていく
男B「あのネタで俺から金とる気か?あいつ。」
店員がコーヒーを持ってきた。
コーヒーを飲む男B
男B「!?まずっ!なに、ここの店のコーヒー・・・
ていうか、あいつ・・全部センスないな。」
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