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【海のナンジャラホイ-49】調査地近くの小学校が廃校になりました

調査地近くの小学校が廃校になりました

主調査地の牡鹿半島狐崎浜

私たちの研究室で最も頻繁に調査に出かける主調査地とも言うべき場所は、宮城県の牡鹿半島西部に位置する石巻市狐崎浜です(写真1)。

写真1:狐崎浜への道しるべ

私がこの場所に通い始めたのは2011年3月の震災の直後からで、すでにこの地で行われた研究の成果に基づいていくつもの論文を出しています。狐崎浜で私たちがいつも調査を行なっている場所には、人工護岸や天然岩礁、アマモ場やアラメ海中林、ホンダワラ類の藻場など、いろいろな環境が比較的狭い場所にコンパクトにまとまっているのです。しかも、水深は5m以浅の場所がほとんどなので、目も届きやすくて、学生たちと安全に潜水調査を行うには最適なのです。これまで、定期的な調査を行なったり、海中実験を行ったり、動物や海藻の採集調査を行なったりさせて頂いてきました。それも、地元の漁業者の方々のご理解と助けがあってのことで、折々に随分とお世話になってきました。
その狐崎浜の調査地に向かうとき、高台に小学校があり、震災の直後からしばらくは避難所にもなっていました。調査の時にはいつも小学校の前を通るので、自然教室など実施して何か地元にお返しできないかと、移動中の車内で学生たちと話をしていたのです。

東浜小学校の廃校

その高台の小学校は石巻市立東浜小学校です。地元の漁業者の方に紹介していただき、ついに海の生物の観察教室を実施しようということになったのですが、コロナ禍の影響で実施は延びて、ようやく実現したのは、昨年2022年の6月のことでした。私たちは午前中に潜水調査時に生物採集を行い、その生物たちを小学校に持ち込んで、実体顕微鏡なども使って観察して、解説を行いました。また、7月には子供達のサマーキャンプにも参加して、海岸で生物の解説を行いました。こんな感じで来年も実施できると良いな、と思っていたのです。
ところが、残念なことに、地元の小学生の数の減少によって、東浜小学校は2023年の3月までで閉校することが決まってしまったのです(写真2)。

写真2:最後の卒業式間近の東浜小学校(玄関)

もっと早い時期から自然観察教室など行っていればよかったのに、と悔やまれました。閉校式は2月25日に行われ、子供達による獅子風流も披露されました。卒業式は3月17日で、最後の卒業生2名は、4月から石巻市万石浦中学校に進学しました。そして、東浜小学校の建物は封鎖され、今は、地元の人たちも立ち入ることができなくなりました。

何かできないかな?

東浜小学校は、震災後に改修が行われたこともあって、建物もプールもとても良い状態です。地元の方々は、避難所や集会所として使いたいと考えておられるようです。私たちも、地元の方々との交流や自然教室の開催、それに叶うなら調査時の実験サンプルの処理などの場所として、使わせて頂くことができれば嬉しいと思っています。
いま、少子化のために全国で多くの廃校が生じて、それらの中には地域のために有効に利用されているものもあります。東浜小学校についても、私たちに何かできることはないだろうかと、只今思案中です。

○o。○o。 このブログを書いている人
青木優和(あおきまさかず)
東北大学農学部海洋生物科学コース所属。海に潜って調査を行う研究者。


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