そして俳句の振れ幅/かせん

俳句をやってます。俳句のことを考えながら書きます。ブログ「そして俳句の振れ幅」の後継に…

そして俳句の振れ幅/かせん

俳句をやってます。俳句のことを考えながら書きます。ブログ「そして俳句の振れ幅」の後継にするかも。

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最近の記事

#RÉSISTIQUE タグ分析

Twitter上の#RÉSISTIQUEタグの使用数を集計分析し、6月2日以前と以後でどのような変化があったか考察していきます。なお、全てのデータはレジスティキさん自身の#RÉSISTIQUEツイートを省いたものになります。 3/6~4/8 4人 5ツイート まず、そもそも、#RÉSISTIQUEタグが初めて使われたのは今年の3月6日でした。意外と最近生まれたタグですね。レジスティキさんの自ツイートに使われているのを除くと3月は2件、4/1~4/8までで3件の計5ツイート

    • 岡田由季『中くらゐの町』を読み解く

      存在しない記憶  岡田由季の俳句の面白さを上手く説明することを難しく思っていた。もちろん、どういう句か一句ずつ鑑賞することはできる。というより、引用句を見ればわかる通り、少なくとも意味内容のレベルでどういう句か悩むことはないし、受け取る情報の深度が人によって大きく違うということもほぼない。  便宜的に情報の深度と言ったが、例えば「万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男」について、「万緑」が「万緑叢中紅一点」という王安石の詩の一節から採られたことを知っているかどうかで、受け

      • 新『あるき神』論(ボツ原稿1)

         復刊『あるき神』の栞に寄せた文章のボツ原稿その1です。栞に採用してる言い回しもあるのですが、他人のことを話すはずが最初から自分語りになるという自分あるあるをやってしまってるのでボツです。ただ熱量もあるし、栞の小論の背景も分かるし、noteの場なら自分語りで別に問題なかろうということで載せます。最近更新していなかったし。  石寒太の俳句を初めて読んだのは、私が二十一歳の頃だった。俳句を始めて一年近く経ち、そろそろ俳句結社にでも入ろうかと考えていたところ、句友が勧めてきたのが

        • なぜ私は炎環賞がとれないのか②過去10年炎環賞選考委員決定力分析

          身も蓋もない言い方だが、前回記事の炎環賞選考分析では、八方美人のような受賞条件が出てしまい、これさえやればかなり有利になるというような、決定的な条件は導き出せなかった。何を良しとするかがそれぞれ違う選考委員の支持を集めるには、第一に失点しないことが求められてしまう。ひとりに強烈に響く作品では受賞ができないというつもりはないが、その上で結局残りの選考委員に少なくとも可と言わせる安定感が作品に求められるということだ。もっともそれができても、ほとんどの場合は広く票を集めた作品には太

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        • そして俳句の振れ幅note
          13本

        記事

          第二十五回炎環賞最終候補作品「遺棄」

          遺棄 西川火尖 炎帝の眼に走る罅思ふ 日雷美しき子に言ひ聞かせ 揚羽蝶一切余白なかりけり 夕立や指を栞の文庫本 抗体の生まるる軋み金魚玉 ががんぼの脚垂らしつつ大事なし かの祭すぐ戦争に喩へられ 風死せり音も光もテレビより 打ち棄てのあらはに祭果ててをり 空蟬のつみ上げられし現在地 雲中の足取りに似て昼寝覚 寝汗の子拭ふ幼しとは言へず タバスコの蓋の凝りや月涼し 手花火の軌跡歪を競べつつ 風鈴の生まれながらの紙の反り 七夕や水を担いでゆく坂も カップゼリーカップ重なり盂蘭盆会

          第二十五回炎環賞最終候補作品「遺棄」

          なぜ私は炎環賞がとれないのか①第25回炎環賞受賞作選考分析

          今年の炎環賞は鈴木健司さんの「スクラップブック」に決定した。炎環賞獲得のために立ち上げた研究グループ「五分の一の会」の所属から去年の私の「みらい賞」、今年の健司さんと2年連続で受賞者が出たことはうれしいが、やはり何より健司さんの作品に力があった。その一言につきるだろう。おめでとうございます。 残念ながら私はコンスタントに句を作ることが難しくなって、みらい賞獲得後は自ら立ち上げた五分の一の会を脱退したが、少数精鋭の作者が同じ目標に向けて批評しあう五分の一の会は、今後も受賞の最有

          なぜ私は炎環賞がとれないのか①第25回炎環賞受賞作選考分析

          omoshiro

          自分が面白いと思ったもの、ましてやそう言ったものを、ちょっとつねられたくらいで簡単に翻すやつをみて、少し悲しい気持ちになった。もちろんそういうことは全然あり得るし、翻す柔軟さをなくしてしまっては、解像度をこれ以上あげられないこともあるから「俺は絶対に自分の意見を変えない」とかいうつもりはないんだけど、もしそれをするなら、今まで面白いと言っていた作品が面白くなかったてこと、ちゃんと作品がそれなら面白くないと言われても仕方がないと納得できるような説明が必要だと思う。 それをほんの

          タイトルの効果

          なるほどと思った。あと、最近の長いタイトルは検索狙いの意図もあったのか。なるほど。 それはまあいいとして、タイトル、である。初心者のころ、俳句総合誌を参考にいろいろ作ったり真似たりしたんだけど、何に驚いたって、タイトルに一番驚いた。有名、高名だとされる俳句の方々のタイトルへのその無頓着ぶりにである。むしろ、そこに工夫をいれないのが「いい」という価値観でもないとあそこまで無頓着にはなれないだろうというくらい、タイトルは蔑ろにされていたと思う。そういう傾向を勝手に感じ取って、違う

          表皮余談

          炎環賞自体は該当作なしだった。本作品「表皮」は選考委員全員の票を集め最高点を獲得したが本賞受賞には至らなかったのだ。しかし激しい議論が起きたことが選評の誌面からも伝わり、賛否関わらず本気で読んでいただいたことはありがたかった。思えば今年1月に炎環賞獲得を目的にした研究会を結成したことが大きかった。メンバー五人の中から受賞者を出そうという気持ちで五分の一会と名付けた。この中で作品発表と評を繰り返したのだが、私はいつまでも調子が上がらず、作品も評も滞っていた。着々と完成度を上げて

          表皮

          表皮             西川火尖 ほうたるを追ふほうたるの速さかな 恋人に教はる化粧さるすべり てのひらに夏の月ほど脆き菓子 部屋狭き故に裸を撮り合ひぬ 夜更しの二人水中花を並べ アルバイトして制服に夏の雨 金魚玉人を騙せし顔したる 十薬の蘂振動を止め久し 伊勢丹の香水瓶の都市抜けよ 唇に塗る空蟬のやうな艶 拡声器に手足褒められ泳ぎけり 水着アイドル花束のやうにされ 剃毛の刃のしりしりと風死せり 初めから揃ふ手拍子旱星 白百合を束ね撲ちたくなつて来し 天牛や震へ虚

          知性の砂漠化

          学術会議叩きと中曽根弔旗に群がる「衆愚」(ごめんね、バカにしないように気をつけても漏れちゃうからはっきり言うけどお前ら底なしのバカだよ)を見て、 臣民が先で、大日本帝国は後から来た感じかな。来るものが来ただけなんだけど、こうなると分かってから数年、常に選択肢に自殺がある。死ぬしかないでしょう?自殺しないの?ねえ?ずっと悪くなる一方だよ?みたいに常に消しても消しても出てくる広告みたいに頭に湧く。 死にたいわけじゃないからクリックしないけど、踏まないように気をつけてる状態がずっ

          徹底した低さ

          全国俳誌協会第三回新人賞、横井来季の「夢に死す」は低い狭い一人称視点の世界の中で、多彩な表現を駆使展開し、その詩情の横溢に翻弄される感覚が良すぎて、良すぎて!良すぎるので話すから聞いて!!!とうい気持ちで内々のZoom受賞祝賀会に参加して、話すだけ話してきたことがありました。これはその時の全句鑑賞版のトーク資料をウェブ公開用に編集抄録したものです。 是非、受賞作「夢に死す」の流れを体験してから読んで欲しいけど、これが初見でも「この作品いいな」って思ってもらえたら嬉しいから、遠

          円錐新鋭作品賞応募作「祈りを真似る」

          祈りを真似る 男手の声のかたまる冬座敷 あやとりの紐垂れてゐる姉の部屋 寒紅や広口瓶に棲む魚 胸の雪払ひ祈りを真似てをり 録音の始まりを告げ雪螢 山茶花や古新聞の嵩乾く 初めての言葉を試す冬林檎 トロンボーン吹いて鯨の世を待てり 節分の水に浸かりし米二合 湯冷めして夜勤の小さきリュックかな 春コート葉書が入るポケットの 春浅しフックに吊るすワークシャツ 勘違ひせしまま春の雪浴びぬ 液漏れの電池蘖えさう外す 灰の水曜日二人のココアかな   蝶々の生るる前の約束す うすらひを傾

          円錐新鋭作品賞応募作「祈りを真似る」

          敵はどこか!?

          元の発端はこのツイートだった。 要約すると、 ・慣習からか原稿料などの条件が明確に事前提示されない案件がある ・原稿料を聞けないなどの心労は書き手が被るべきものではない ・原稿料、条件の提示は依頼者の義務 ・キャリアのある書き手から「働きかけて」依頼者側の意識と常識を変えなければならない です。 俳句の世界でも同様の問題は存在します。 総合誌から「いついつまでに10句、エッセイ付きで」というような依頼をたまに受けるのですが、原稿料が書いてあることはまちまちです。雑誌単位で

          KOKODEIKKUCITY

          [Verse 1] そうハマってたのは17の音 舌頭千転ルール作りだした頃 投稿の説明見て龍谷賞 ハイクブログってサイト、マイページがアジト ちっちぇ歳時記見様見真似で 季がぶれたウェブのオヤジと鑑賞フかして 本屋に並ぶ、初句集 夢に描いて 未知の世界、季題に下五ふくらまして 俳句だ?選もねぇ 季語のスネかじって言うことに意味なんかあるわけねぇ 知った顔で汚ねぇポエット表現 助詞に厳しめ字題に揺られて サボりで駅前、雑踏の中で手にしたソレは人生初、最高の句集 仲間が待つ店

          賛否の非対称性について

          最初は連ツイと言う形で投稿していたが、これはnote向きの長さだろうということで場所をこちらに移し、続きを書くことにしました。 「これ、揶揄してるつもりはなくて、総理大臣になるくらいの人物は大抵賛否両論なのよ。だから、否定的な記事があるのはわかる。でも政権史上最長任期の総理大臣について賛辞を与える記事が皆無なのは何故なんだ?いくらなんでもだろう。いや、まぢで。」田島さんのツイートより 安倍晋三への賛否を考えた場合、結論めいたことを言えば、批判側と称賛側が同じ「フォルダ内(

          賛否の非対称性について