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2019.04 019+1 ೫ Profile 序文・鳥籠ラストページ / 早乙女まぶた まぼろしを待つ / 完全なQ体 午前二時の芸術家 / 深井一 煉瓦の横顔、バス停消失。 / 水槽 井戸の底 / 岩倉文也 星々の肖像 / 象徴 集・一 / 諍井寄人 チヒロ / ひのはらみめい エフェメラの胎動 / 間富 春 / 清水優輝 鍋 / おだやか 私という下地にいくつかのためらい傷を / shakainu 幻辞苑より24項 / えもいえ 短歌連作 /
先日「なんで詩を書いているのか」といった質問を受けることがありました。 「傘と包帯」もありがたいことにもう三年目です。初心を振り返るという気持ちを込めて、この場を使って回答しようと思います。 ◇ "どうしたら人生の外に出られるだろうか?" この切実な問題に座礁した人々は、それをなかったことにするだけで、解決の手立てを持つことができなかった。解は用意されていない。ただ象徴のように飛び立つ以外にない。内部で見つけた解では釈放されることはないからだ。 ぼくたちがこの世で目を覚
私は虫を殺すように私を解体する その過程、そのさなか 私のものではない舌が 私の口の中で死にたいと呟く 電線が夜の闇に潜んで機を伺っている 見上げると風 この町で毎晩ねこは死んでいる この町の全ての釘は錆びている ずっとまぼろしを待っていた この何もない通りの 目の端で点滅する街灯の先 廃墟に破船の光を見つけるとき 記憶は荒れ果て、町は美しく腐ってゆく 二十二時 徐々に冷たくなってしまった 私の身体には銃が埋められていて いつかそれは暴発するだろう、そのとき 私の臓腑を
世界の秘密が明かされる朝 偽りの空は剥がれ落ち ひしめく歯車が太陽にとってかわるだろう 低く続く地鳴りが終末を数える 苔むした遺跡を風が吹き抜ける昼 蒼く霞む都にまだ誰かいるのか 羽ばたく鳥が光を揺らす 無音よりも静かにうたた寝する歴史 降り止まぬ小雨に引き籠もる夕暮れ 窓ごしの雨の音に象られた文字列 名もなき思想はプレスされて相を転じ 紡がれたのははじまりの物語 夜は更ける僕は描く深く澄んだ孤独を 夜は更ける僕は歌う握りこぶし作って 固定された現在が文字盤を回す 輪郭
おはよう、目 おはよう、鼻 おはよう、口 おはよう、耳 おはよう、ふたつでひとつのぼくらの脳 毎日から毎日へ、 毎日毎日、毎日と呼ぶ毎日へ、飛来する横顔、 煉瓦造りの横顔。 靴下すら探せないのに 玄関すらわからないのに 行ってきますも言えないのに エレベーター内は雨なのに 駅は真っ暗で バス停は消えている のに 光の反射で生きているみたいに 微笑みの角度で死んでしまうみたいに 眼球の後ろから空っぽになっていたこと かれはほんとうに宇宙人だった かれはほんとうに宇宙人だっ
詩に憑かれ 詩に焼かれ やがて厖大な背後から立ち昇る 幻影の水鳥たち みな 奇妙に片羽を欠いている 炎のためか 昏睡のためか うらがえされた言葉に 迂闊にも触れてしまったためか おれは 残存する産声をしらない 残存する叫声をしらない どこまでも つづく行列はいつも影に見える 水飛沫あがり 詩はいつしかべつの生きものに置換される そうして 始まったこの猿芝居 たとえおれが いなくなったとしても井戸の 底で喜劇はつづくのだ 男「だからと言って、ここはあまりに暗い」 女「暗いか
換気扇が回転する それは死んだ惑星の幻影 それは亡命者たちの磁場 一室には 垂直に連なった針 大きな動物のわずかな呼吸 塩と水それから種無しパン 口の奥で氷が溶ける 少年の畏怖と憧憬を 祈りが指の隙間に絡めて 鎧戸はわたしたちと世界の遠近法を定義する 通りをせわしなく過ぎる無数の車輪 卑怯に笑う人々のひび割れたくちびる 割れたグラスをあつめて 視界は揺らぐ 揺らぐ 誰も知らない天体が砕け散って 上空は青色が剥落したフレスコ画 頭上をどんな風が吹いているのか 知らない さあ
スコップを何回何回 振り抜く を何回 眉へ かわいい眉へ スコップを振り抜く 眉は ひだり みぎ ひだり みぎ ひだりッ みぎッ ちゃーんと二個ただしく並べて 刳り抜く 眉へ 刳り抜く 眉は その裏 ぐっすりお●●をひらいた 目は飽満にすぎる 目は食いちぎって吐き捨てる 陽なたも慈雨も 期待も否定も 生誕祝いも輪を括る朝も 唾一滴 ただその光を湧いては おれを見殺す目を目をみな おれの墓穴とする 手は スコップを振り抜く 眉からともども刳り抜く
人生に慣れすぎた大人の我々は目先の欲にとらわれすぎてしまう。 千尋は私たちが貪り食べるものの意味も理由も知らない。 ただなんとなく感覚で避けて、 避けたことが正解だと気づくのも多分ずっと先だろう。 毛玉でできた星空から星をsweepするsweetな箒の玩具。 食用の花であっても美しくなくてはなりません。 普通で居たいと思うから、回復期のあなたは俗物でいたがり、描く物語のひとつひとつにも聴き慣れた旋律が見え隠れするのでしょう。 美しくありたいとおもうからゴッホやモネの真
「こんばんは、兎です」 白い目で見てくれ 此方には彼方 遠くの水辺の過去を憶え べたついたてのひらに波を描く そう致しましたら 宜しく…… 窓際の瓶に水を差す 石鹸水の漣 花が開くのを静かに待っている 窓際の瓶 罅 水路 粘膜に張り付いた余白に街を見る 消えかけた気配 振り向かない かつてそうであったように ゆらり 鼓動が聴こえる 宿木に灯る明かりが蠢いている 此処は彼方 小さな声
桜の蕾が膨らむ前に彼は中央線に消えたらしい 噂で聞いただけだけど 着信履歴をフリーダイヤルが埋める毎日だ フリルたっぷりのパンツを買った 洗濯するたびほつれる糸を見つけてほしい おみそ汁に乾燥わかめを入れすぎたとか ついに花粉症になっちゃったとか そういうことをお話しようよ 桜の開花前線が北へ北へあがっていく 天気予報のお姉さんは嬉しそうだけど私には関係ないし 通信制限がきてyoutubeが見られない ぬいぐるみとダンスパーティー ららら 楽しくないわ 手を取ってくれ
鍋が煮えるころ 世界は終わります 嘘 って思うかもしれないけど 本当の話 外から雨の降る音がしているね でも実は星が降ってるんだ 窓を開けてはいけないよ あんまり眩しくて 目がつぶれてしまうからね お肉のアクをぜんぶすくったころ 世界は終わります 嘘 でないことはまだ 信じてもらえてないみたいだね 遠くで梟の鳴く声が聞こえるね でも実は宇宙人を呼ぶ呪文なんだ 聞き入ってはいけないよ 美しい音だけど 洗脳されてしまうからね 鍋が煮えたので 世界は終わります 嘘 というのは半分正
生柔らかく、じんわりと染めるような薄桃色をベールで覆ったような白肌は、少女が自ら眺めたって心動かされるものでもなかった。 魔女は嫉妬し「白壁みたいね」と彼女に言った。 魔女の言う言葉が嫉妬であろうと言うことは、なんとなく分かっていた。 だが彼女は白雪姫ではない。森へ追いやられることもなく、彼女のフラストレーションが溜まり時は過ぎた。 彼女はこの肌が嫌になった。この身体でなければ魔女に嫉妬されずに済むだろうか、方法は分からない。 肌を痛めつければ誰も羨ましがることはないだろ
あもり‐ぎ 【天降り木】 (名) 地に根を下ろし天に枝をのばす通常の木に対して、天に根を下ろし地に向かって枝をのばす木のこと。想像上の植物。民間伝承のなかでは、「雨にふりこまれた旅人が木陰に逃げ込み幹にもたれて休もうとする。だがどこにも幹が見つからない。よく見ると地面にまったくつながっていない天から生えてきた木だったのだ」という筋を基本として数多くの類話が存在する。 眉唾な迷信として古くから知られており、「――ごと」で「ありえないこと」を意味する。また「――の根」は「あ